【平安京の事件簿】惨殺され、野犬に食われた皇女の遺体…犯人が供述した黒幕は?:3ページ目
スッキリしない幕切れ
……が、隆範はそれ以上自白せず、犯行の動機などについては頑として口を割りません。
そればかりか、7月28日には盗賊の首領と名乗る者が検非違使庁へ自首したため、隆範に対する取り調べは中止に。その首領とやらについても結局どんな処分が下されたのか記録がなく、すべてうやむやになってしまったのでした。
「悪とは申せ三位は三位。しかるべき方面から手が回されたのやも知れんな……」
しかし流石にお咎めなしではなかったらしく、翌万寿3年(1026年)に道雅は左近衛中将と伊予権守を罷免され、右京権大夫に左遷されます。
これで殺された女房が浮かばれるはずもありませんが、理不尽な事件に憤る者たちにとって、せめてもの一矢となったでしょうか。
※参考文献:
- 倉本一宏『平安京の下級官人』講談社現代新書、2022年1月
- 繁田信一『殴り合う貴族たち 平安朝裏源氏物語』柏書房、2005年9月