お稲荷さんの正体は狐じゃなく人喰い鬼!?稲荷神社にまつわる深い闇:2ページ目
大日如来に出会い、会心した荼枳尼天
人喰い鬼である荼枳尼天のターニングポイントは、大日如来との出会いで訪れます。大日如来は、密教における万物の母です。
そんな大日如来は荼枳尼天に、人喰いを改めるよう申し渡しました。そして大日如来は荼枳尼天に、人間に死が訪れる半年前に、その者の死期を予知する能力を与えます。
大日如来の導きで生きた肉を喰らう鬼から脱した荼枳尼天は、仏道に帰依して改心。人命を奪う鬼神を改めて五穀豊穣の神になり、寺に祀られるお稲荷さんとなりました。
消えることない荼枳尼天の過去
しかし荼枳尼天の恐るべき過去を、人々が簡単に忘れることはありませんでした。
「今は穏やかそうに見えても、その本性は人喰い鬼だ。」
「どうせ意にそぐわないことがあれば激昂し、人間を取り殺すことだろう。」
こうして
- お稲荷さんを気軽に拝むと祟られる
- 稲荷信仰を止めると災いが降りかかる
こういった誤解が流布したと言われています。
ただ巻き込まれただけの、もう一つのお稲荷さん
荼枳尼天を祀る寺のお稲荷さんは、荼枳尼天の過去の過ちから、祟り神と誤解されてしまいました。そしてその火の粉はなんと、荼枳尼天とは何ら関係のない、神社系のお稲荷さんにまで飛び火したのです。
京都の伏見稲荷大社を総本社とする神社系のお稲荷さんは、宇迦之御魂神(ウガノミタマノカミ)を祀っています。神社系のお稲荷さんに狐が多数祀られているのは、宇迦之御魂神の使いが狐であるためです。
しかしここで、
- 狐は人を化かす(という誤解)
- (狐の繁殖力の高さから)狐は仲間を増やして、人間の暮らしを脅かす
- 狐は畜生(野生動物)だから、愚かな行い(人を祟る)こともやってのけるに違いない
荼枳尼天騒動で発生した火の粉は、狐に対する誤解に着火します。
その結果、お稲荷さん=祟り神といった誤った理解が広がりました。