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あなたの「金田一耕助の時代」はいつ?~復古神道と『ひぐらしのなく頃に』~

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理想主義、美化、そして金田一耕助

復古神道の考え方がどこまで的を射たものかはさておきます。さすがに、大陸文化が流入してきた後の日本、つまり「中つ世」は堕落した時代なのだから、天皇を中心的存在として人の道を探っていこう……という主張は今の時代にはちょっとそぐわないでしょう。

実際、復古神道の考え方は、学問と信仰が混然一体となっているようなところがあります。黄金時代とされる上つ世のイメージはあまりにも理想化されすぎていて、どう考えても当時のありのままの姿ではありません。

今「理想化」と書きましたが、こういう復古主義は、東西に限らず、歴史上あるいは伝統上の過去に理想を見出す立場で、実は「理想主義」の一種だといえます。

さて、このように見ていくと、人間って大昔から「過去に対する勝手なイメージ」を何かしら持っているもので、エンタメの世界や学問的な世界で、特定の世代が抱いているそうしたイメージがある時に思いがけず噴出してくるものなのだと分かりますね。

こういう例は、スケールの大きなものから小さなものまで、本当に多いです。太平洋戦争の美化、明治維新の美化、江戸文化の美化、「三丁目の夕日」の時代の美化、幻想としての共産社会、ムラ社会に対するノスタルジー……。

もちろんイメージはいくら持っていたって構いませんし、そういう豊かなイメージが文芸の分野で素晴らしい作品を生み出すこともあります。

だけど、豊かなイメージというのは、正確で細やかな知識と情報によって裏付けられてこそ、より豊かになっていくのではないでしょうか。自分の持っている勝手なイメージに対する自覚と学びを大切にしたいものです。

というわけで、今こそすべての日本人に問います。あなたにとっての「金田一耕助の時代」はいつでしょうか?

 

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