あなたの「金田一耕助の時代」はいつ?~復古神道と『ひぐらしのなく頃に』~:2ページ目
古代こそが理想!それが復古神道
しかしこういうジェネレーションギャップは、今に始まったことではありません。私にとっては終戦直後や高度経済成長期なんてとても古い時代の話に感じられますが、もっと年配の人から見れば、つい最近のように感じられるでしょう。
その時代の空気を、多かれ少なかれ「肌で感じている」と、その時代もごく身近に感じられますね。
逆に、「肌で感じて」いない時代というのは、どこか遠いもののように思えます。そして、頭の中で勝手なイメージで染め上げられてしまうことがあると思います。
その最たるものが、復古主義でしょう。
復古主義は、古い時代を理想的な時代だと考えます。これは東西を問わず昔からある考え方で、たぶん世界史的に最も有名なのは西洋のルネッサンスでしょう。ルネッサンス期には古代が黄金時代とされ、没落後の「中世」は暗黒時代とされました。
また中国にもこういう考え方があります。孟子は尭(唐)、舜(虞)、と夏、殷、周の三代を合わせた「唐廣三代」の時代を、古代の太平の世として讃えています。
また日本にも、古代の「上つ世」を理想的な時代と考え、これを無為自然の黄金時代とする思想が出現したことがあります。江戸期に国学者が唱えた神道の一流派「復古神道」です。
これは、儒教や仏教などが渡来するよりも前の古代日本に復帰しよう! と強調する学派で、荷田春満(かだ・あずままろ)、賀茂真淵(かも・まぶち)、そして完成者と言える本居宣長(もとおり・のりなが)までの系譜を持っています。
宣長が批判したのは、日本書紀の記述に対する解釈があまりにも儒教の影響を受けすぎていることに対してでした。それは「漢心(からごころ)」による解釈だとして、大陸文化が入ってくる前の日本文化の心に帰ろう、と主張したのです。
彼が尊重したのは『源氏物語』『万葉集』『古事記』です。どれも古典中の古典ばかりですね。こうした作品群の価値が強調されたのです。