秀吉の「関白」の位は大したことがなかった!?歴史上の“天下人”たちと朝廷とのビミョーな関係:3ページ目
征夷大将軍でなくても権力者は権力者
現代の歴史学の定説でも、源頼朝や足利尊氏のような天下人たちは征夷大将軍の地位を与えられたから幕府を開くことができた、という形で因果関係を定める考え方は支持されていないようです。
実際には朝廷から与えられる地位など関係なく、それよりも前の時点で彼らの「実力」によって幕府は成立していた、ということです。
ではその後の家康はどうだったかというと、一応征夷大将軍のポストに就いてから幕府を開いていますが、実際にはすでに関ケ原の戦いの直後にはものすごい権力をふるい、戦いに関与した大名たちの処遇を決めています。
味方として戦ってくれた大名の領地は増やし、敵になった大名は領地没収。完全に刃を向けてきた大名は切腹……と、この容赦のない裁きぶりと権力の発揮は、東京裁判を思わせます。何も征夷大将軍のポストを与えられなくても、これぐらいのことは既にできたのです。
子供の頃に教科書で習った日本史の定説が、最近はいろいろと覆されています。中でも「鎌倉幕府の成立は1192年じゃない」というのは、「イイクニ作ろう鎌倉幕府」で覚えてきた世代にとっては衝撃的ですが、その根拠は、武家社会と朝廷のこうした関係性の実態にあるんですね。
参考資料
本郷和人『日本史の法則』(河出新書)2021年