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現代とはかなり違う!?昔の人は何を「うつくしい」と感じたのか、古典文学から探る
「美しい」という言葉を耳にすると、大抵の方は女性や花など、英訳するとbeautifulに相当するものを連想するかと思います。
しかし、言葉というものは時代によってニュアンスが変わってくることも多く、この「美しい」という言葉も、かつては現代とかなり違っていたようです。
そこで今回は、この「うつくしい」という言葉がもっていたかつての意味について調べ、紹介したいと思います。
古典『枕草子』『万葉集』などに見る「うつくし」さ
まずは古典文学を代表する清少納言『枕草子』にあるこんな一節。
「うつくしきもの(中略)二つ三つばかりなるちごの、いそぎてはひ来る道に、いとちひさき塵のありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなるおよびにとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。頭(かしら)はあまそぎなるちごの、目に髪のおほへるをかきはやらで、うちかたぶきて物など見たるも、うつくし。(後略)」
【意訳】「うつくしい」ものについて。
2~3歳の小さな子供がハイハイしながらこっちへ来るとき、小さなゴミを見つけて、それを何が面白いのかしっかりと手につかみ、嬉しそうに見せてくる無邪気さと言ったら。
また、おかっぱ頭(尼削ぎ髪)の女の子が目にかかる前髪を掻き払いもせず、首をかしげかしげしながら絵本など見ている様子も、本当に「うつくし」いこと……。
小さなゴミを無邪気に見せて来る子供、前髪を払い押さえることも知らず、首をかしげる子供……確かに可愛らしいけれど、あまりbeautifulではなさそうですね。
現代の感覚では美しさよりもむしろ「幼(いとけな)さ」を感じてしまいますが、それでは次の『万葉集』はどうでしょうか。
「橘の 古婆(たちばなのこば。地名)の放髪(はなり)が 思ふなむ
己許呂(こころ)宇都久思(うつくし) いで(出で)吾(あれ)は行かな」
※『萬葉集』巻十四 東歌より
【意訳】かの地にいる振り分け髪の少女が私に逢いたいと思ってくれる心を「うつくしく」思うため、私はどんな大変な道中も苦にせず行こう
振り分け髪とは文字通り前髪が目の邪魔にならないよう額の中央で振り分ける髪型で、イコール幼女を指します。
これは恋人やそういう恋愛感情の対象ではなく、娘かあるいは姪っ子、あるいは知人の娘さんなどに「また逢いたいから、来てくれる?」と言われて「あぁ、もちろん来るよ!」と約束したのかも知れません。
あの子の喜ぶ顔が見たいから、どんな険しい道のりも苦にはならない……相手を「うつくしく」思う感情は、そんな意欲の源泉ともなるようです。
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