紅葉に染まる山の「鬼伝説」。妖しく恐ろしくも美しい鬼女・その名は紅葉(もみじ)【前編】
2020年、空前のブームとなったアニメ「鬼滅の刃」の影響で、この現代社会にて一躍脚光を浴びることになった「鬼」。
一般的には、恐ろしく巨大な姿のイメージがある鬼ですが、地域によっては、妖しく美しい姿の鬼女伝説もあるのです。
山々が美しい紅や黄色に染め上げられていく紅葉の季節にぴったりな、信濃の国に300年以上も伝わる鬼女・紅葉(もみじ)の伝説をご紹介しましょう。
信州戸隠に伝わる美しい鬼女伝説
長野県の、戸隠・鬼無里・別所温泉などの地域に伝わる、鬼女の言い伝え「紅葉伝説」。
諸説あるのですが、大筋は「信州の戸隠山には鬼女がいて、夜な夜な村を襲い人々が困り果てていたところ、平安時代中期の武将・平維茂(たいらのこれもち)が、苦労をしつつも最後には見事退治をした」というお話。
時の武将も一目で惑わされた……というほどの美貌の鬼女。
その名前は「紅葉(もみじ)」といいます。能や歌舞伎では「紅葉狩り」という演目でもおなじみです。
信州に伝わる美しい鬼女の伝説
諸説あるうちの一つで、ポピュラーな「鬼女・紅葉伝説」は、このようなお話です。
【魔王に子どもが欲しいと願った夫婦】
今は昔、平安時代の頃。
子どもができない夫婦が、第六天の魔王(仏教において修行を妨げる魔王)に願いを捧げ、女児を授かる。
「呉葉(くれは)」と名付けられた女の子は、成長するにつけ、その美貌と知性の高さで広く知られるようになった。
そんな呉葉の評判を聞き、ぜひに嫁に欲しいと、金持ちの息子が望むものの、縁談に乗り気ではない呉葉は、秘術により分身の美女を生み出し自分の身代わりとして、両親と共に京の都へと逃走する。
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