戦国時代、謀殺されて怨霊となったアイヌの首領・ショヤコウジ兄弟のエピソード:2ページ目
追い詰められた光広は……。
実際、アイヌの軍勢は勇猛果敢に戦い、和人側もしばしば苦しめられています。
「退け、退け……っ!」
ショヤコウジ兄弟らの攻勢を防ぎきれず、蠣崎勢はジリジリと後退。他家の援軍もあてにできず、このままでは全滅です。
「……かくなる上は!」
光広は一計を案じ、ショヤコウジ兄弟に対して和睦を申し入れました。
「つきましては皆様をおもてなし致したく、また献上品などもございますので、是非とも松前(現:北海道松前町)までお越し下さいませ……」
これで渡島半島は我らが支配下に統一された……蠣崎家からのご招待を受けて、ショヤコウジ兄弟はご満悦です。
「そうまで言うなら、もてなされてやらんでもないぞ!」
「しかし兄者、これは油断させるための罠かも知れん。いくら和睦とは言え、敵の本拠地に乗り込むのは……」
「なぁに、心配要らん。我らが武勇をもってすれば、万に一つ敵の謀計があろうと、罠もろとも蹴散らしてくれるわい!」
「そうだな……よし、行こう!」
果たして酒宴に招かれたショヤコウジ兄弟と仲間たちは、光広たちのおべんちゃらに気をよくして痛飲し、すっかり酔いつぶれたところを一網打尽に殺されてしまったのでした。
これを「騙し討ち」とするか「謀計の一つ」とするかは判断に迷うところですが、それだけ光広たちが追い詰められていたことは間違いないようです。