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戦国の世も妻は強し!戦国時代、泥酔した夫に代わり甲冑姿で城を守り抜いた妻の武勇伝

戦国の世も妻は強し!戦国時代、泥酔した夫に代わり甲冑姿で城を守り抜いた妻の武勇伝:3ページ目

鬼より怖い妻の笑顔

「んあ?……何があったんじゃ?」

ようやく酔いから醒めた定勝は、目の前の光景に呆然。城内のあちこちで残り火が燻(くすぶ)り、敵味方の死体が転がっているではありませんか。

「……あなた」

「ひい……っ!」

恐る恐る振り返ると、そこには武田の赤鬼よりも猛々しい妻の姿。全身に返り血を浴びて、手に持った薙刀の刃から、未だ乾かぬ血が滴り落ちています。

「……敵方は……ことごとく追い払(はろ)うておきましてよ?」

いつもと変わらぬ優しく美しい妻の微笑みが、今は何より恐ろしい。

「……面目次第もございませぬっ!」

必死で戦っていた日尾城の皆に平謝りした定勝は、後日、主家の一門衆・北条氏邦(ほうじょう うじくに。鉢形城主)からも呼び出しを食らい、断酒を誓わされたそうです。

「……とほほ……」

とは言うものの、その後は北条氏が豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)に滅ぼされる前年(天正十六1589年12月17日)に54歳で亡くなるまで、一滴の酒も呑まず忠勤に励み、家臣たちの信頼を無事に取り戻したそうです。

妻・遠山氏は定勝の死後に出家、妙喜尼(みょうきに)と称して夫の菩提を弔ったそうですが、もし彼女が豊臣軍と戦っていたら、『のぼうの城』に登場する甲斐姫のような武勇伝を残したかも知れませんね。

※参考文献:
阿部猛・西村圭子 編『戦国人名辞典』新人物往来社、1987年2月

 

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