やっぱり浮世絵師・鈴木春信が好き!代表作「風俗四季哥仙」に観る春信の魅力 その2:4ページ目
風流四季哥仙 二月
鈴木春信は子供のみを絵に描く“子供絵”といわれる浮世絵に描くことが多い絵師でもあります。さてこの子供たちは何をしているのでしょう。まず、和歌から読み解いていきましょう。
きさらきや けふ初午の しるしとて いなりの杉ハ もとつはもなし
光俊朝臣『新撰和歌六帖』より
(訳)如月の初午に参詣した人々が、そのしるしとして、杉の小枝をとっていくので、稲荷山の杉はすっかり葉がなくなってしまった。
如月とは二月こと。その二月の最初の午の日に、全国の稲荷神社では“初午大祭”が行われます。落語に江戸の名物として「武士、鰹、大名、小路、生鰯、茶店、紫、火消し、錦絵、火事に喧嘩に中っ腹、伊勢屋、稲荷に犬の糞」という言葉があります。それほど“お稲荷さん”は神社だけでなく、ほこらや、武家屋敷・長屋の共同スペースなど江戸の町のあらゆる所にありました。それほど稲荷信仰が盛んだったのです。
もともと京都の伏見稲荷の主神ウカノミタマガミは“田の神”でした。そのため元は五穀豊穣を願い、それがやがて家業の繁栄、一家一族の繁栄、商売繁盛を願うようになったのです。
5ページ目 この日は盆と正月とハロウィンが一緒に来たようなお祭りだった