水木しげるの前にキタローを書いた男!ゲゲゲの鬼太郎の原型「ハカバキタロー」【4】:2ページ目
残された絵から想像する、失われたキタローの姿
現在、文献やインターネット上で見ることができる、辰巳が描いたとされるキタローの絵は、たった1枚です。紙芝居『墓場奇太郎』の表紙らしき絵で、これが現存する唯一の辰巳版キタローと考えられます。
街頭紙芝居では、人気が出た作品はシリーズ化され何巻も作られました。『ハカバキタロー』もそうです。
それなのに、なぜ残っていないのか。
当時の街頭紙芝居は、1つきりの直筆原版を、紙芝居屋のおじさんたちが使い回していました。それでも『ハカバキタロー』の原版は倉庫に保管されていたのですが、昭和20年に空襲によって倉庫ごと焼失してしまったのです。
そんななかで、なぜこの1枚が残ったのかも謎ですが、ともかく貴重な資料であることは確かです。ここから辰巳が描いた“最初のキタロー”を想像していきましょう。
ただし著作権の所在が不明なため、ここでは言葉のみの説明となるのをお許しください。
その表紙は、描かれた年代は不詳です。
大きく書かれた「墓場奇太郎」のタイトルと「富士會」の表記。タイトルの下に「作・イト マサミ」「画・タミ 恵洋」の名前が並んでいます。伊藤正美と辰巳恵洋のペンネームでしょう。
そして真ん中に描かれた少年が、主人公の「奇太郎(キタロー)」であることは間違いありません。地面に掘られた穴から顔を出しています。墓の中で生まれた少年・墓場奇太郎です。