愛しい人々との別離…防人たちの思いが詠まれた「万葉集」防人歌を紹介
新元号「令和(れいわ)」の出典として俄然注目を浴びるようになった『万葉集(まんようしゅう)』。
首相の会見でも言及されていたように、万葉集は日本最古の歌集として、身分の上下や立場にとらわれることなく収録され、自由闊達に詠まれた多彩な表現が魅力となっています。
今回は、その中でも日本の国境防衛に当たった防人(さきもり)たちが詠んだ防人歌(さきもりのうた)について紹介したいと思います。
愛しい者を故郷に残し……
ここで歴史のおさらいですが、防人とは百済(くだら。朝鮮半島の古代王朝)を助けるために出兵した白村江の戦い(はくすきのえ・天智天皇二663年10月)で敗れた日本が、百済を滅ぼした唐(中国大陸の古代王朝)と新羅(しらぎ。百済のライバル王朝)が日本に攻めて来ること想定して、国境地域(主に九州北部)の守りを固めるために召集した兵士です。
ちなみに「さきもり」という読み方は古来沿岸部を警備していた「岬守(みさきもり)」に唐の制度であった「防人(ぼうじん)」の漢字を当てたものと考えられています。
さて、防人は各地から集められたのですが、任期は3年間と長くしばしば延長され、しかも食料や装備、行き帰りの交通費などは自腹、しかも税の減免はなし、と非常に負担の大きなものでした。
一度発てば、もう二度と帰れないかも知れない……そんな厳しい状況下にあって、防人たちはそれぞれの思いを詠んだのでした。
今回は、特に多くの防人歌が収録されている『万葉集』巻第二十より、おすすめの三首を紹介したいと思います。