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花の命はなぜ短い?日本の神話と歴史が記された「古事記」に伝わる花嫁たちのエピソード

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炎の中で三つ子を出産!木花之佐久夜毘売の立てた「誓約」

……さて、そんな事などお構いなしに、新婚初夜の明くる朝。

邇邇芸命が目を覚ますと、その枕元には木花之佐久夜毘売が、まんまるくなったお腹を抱え、幸せそうに微笑んでいました。

「あなた……お腹の子、もうすぐ産まれそう。あなたの子よ?産んでいいでしょ?ねっ?」

【原文】「妾妊身、今臨產時。是天神之御子、私不可產。故、請」

そう聞いて、邇邇芸命は完全に目が覚めました。

「……謀ったなっ!」

いくら神様だからって、一晩で子供が出来た上に、そこまで大きくなるわけがありません。

「そなた、既に国津神(くにつかみ)の子を孕んでおきながら、私をたばかったな!」

※国津神とは邇邇芸命のような天津神(あまつかみ。天上出身の神様)と異なり、地上出身の神様を言います。

しかし、木花之佐久夜毘売は断固として譲りません。

いーえ!絶・対にあなたの子です!あなたがお疑いなら、これからそれを晴らしてご覧に入れましょう!

そう言って木花之佐久夜毘売は、召使いに自分の産屋(うぶや)を建てさせました。産屋とは出産専用の「離れ」で、昔は女性の生理や出産を「血のケガレ」として遠ざける風習があったのです。

それだけなら普通ですが、この産屋には戸も窓もなく、木花之佐久夜毘売を閉じ込める形で完成しました。

「いったい何をする気なんだ!?」

尋常ならざる様子に動揺する邇邇芸命に、木花之佐久夜毘売は誓約(うけい)をします。誓約とは天地神明に対して誓いを立てることで、古代の神々は時として、自分の言葉に命さえ賭けたのでした。

これから産屋に火を放たせますが、もし私の宿している子の父が国津神であれば、私はこの愛されぬ子と共に焼け死ぬでしょう。しかし、私の宿している子の父があなたであれば、何があろうと無事に産まれる筈……さぁ、火を放ちなさい!」

5ページ目 炎の中で生まれた子

 

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