花の命はなぜ短い?日本の神話と歴史が記された「古事記」に伝わる花嫁たちのエピソード:3ページ目
かくて命は花のように
(うへぇ……)
まさか絶世の美女を娶るには「醜い姉がセット」だったなんて……邇邇芸命は参ってしまいました……が、そこは己が欲望に「YES!」と言える神様、おとなしく運命を受け入れるようなタマじゃありません。
「いやぁ、お義父様……あのぅ、せっかくの『お気持ち』ではありますが……モニョモニョ……」
とか何とか言ったかどうだか、いずれにしても石長比売はその場でご実家へリリースさせて頂き、木花之佐久夜毘売のみ妻として迎え入れたのでした。
……しかし、仮に石長比売がおとなしく帰ったとしても、木花之佐久夜毘売の胸中はちょっと複雑だったのではないでしょうか。
もし筆者が同じ立場なら「私の美しさは認められた!わーい♪」という気持ちよりは「姉がかわいそう……と言うか、彼は容姿だけで他者を判断する神様なんだ……ふぅん……」という思いが渦巻いてしまいそうです。
まぁ何はともあれ、邇邇芸命は木花之佐久夜毘売と結ばれたのですが……一方、リリースされてしまった石長比売から事の次第を聞いた大山津見神は、たいそう恥じ入り、残念がって言いました。
「あぁ……なんと勿体ないことをなされたか。私が石長比売を嫁がせたのは、石の如く永き命を奉げんがため。木花之佐久夜毘売とだけ結ばれたことで、いっときは咲き誇れども、やがて儚く散ってしまう運命を選ばれたのだ……」
石長比売は石を司る女神であり、古来その堅さから不変不朽(変わらず、朽ちぬもの)の象徴とされ、邇邇芸命と結ばれることで、彼に永遠の命を奉げようとしたのでした。
これにより、邇邇芸命やその子孫である神々や人間たちは、その命が花のように短く儚いものとなってしまった、と言われています。
4ページ目 炎の中で三つ子を出産!木花之佐久夜毘売の立てた「誓約」