花の命はなぜ短い?日本の神話と歴史が記された「古事記」に伝わる花嫁たちのエピソード:2ページ目
まさかの初対面プロポーズ、そして二人の花嫁
さて、こうして絶世の美女・木花之佐久夜毘売と出会った邇邇芸命はと言いますと……
「結婚して下さい!」
【原文】「吾欲目合汝奈何」
【読み下し】「吾(われ)、汝(いまし)を目合(めあ)はむと欲(ほっ)す。奈何(いかん)」
まさかの初対面プロポーズ。さすがはやんごとなき神様、なさることも桁違いです。
まぁ実際は「私はそなたを妻に迎えたいと思うておるが、そなたはどうじゃ?」くらいのニュアンスだと思いますが、その返答はと言いますと、
「あの、お父様よりお答えいただきませんと……」
【原文】「僕不得白、僕父大山津見神將白」
【読み下し】「僕(やつがれ)白(まを・申)し得ず、僕が父・大山津見神まさ(将)に白さむとす」
まぁ急ぐ話でもなし、ましてや結婚とあらば「お父様」に筋を通すのが道理……という訳でさっそく「娘さんを私の妻に迎えたい」とご挨拶に伺ったところ、天照大神の孫神様とあらば、これはもう「玉の輿」どころの騒ぎではありません。
大山津見神は謹んで快諾し、大急ぎで婚礼の支度。家来に銘じて娘「たち」を邇邇芸命の元へ送り届けさせましたが、届いた花嫁の駕籠(かご)が二丁あるのを見て、邇邇芸命は首をかしげます。
「はて?私が妻に頂いたのは娘一人の筈だが……」
そういえば、木花之佐久夜毘売には石長比売(いわながひめ)という姉がいると聞いていたので「もしかして姉妹ともども下されたのか。それは誠にありがたい……」と駕籠から出て来た姉妹を出迎えた邇邇芸命はびっくり仰天。
それもその筈、石長比売は妹に似ても似つかぬ醜女(しこめ)だったのです。