祈りから始まる天皇の一日。儀式と礼拝に彩られた平安時代の天皇の暮らしをのぞいてみよう:2ページ目
毎朝祈りから始まる天皇の一日
御所の「清涼殿」。ここは16世紀まで天皇が日々政務を執り行い、また生活の場でもあった個人的な空間でした。
起床はおよそ7時から9時。身なりを整えた後は毎朝、白い漆喰で塗られた「石灰壇(いしばいだん)」というところで火をたき、伊勢神宮の方角を拝み国家安泰を祈ります。
天皇の体は国家そのものと扱われており、穢れや痛みを忌み嫌うので、刃物は厳重に取り扱われていました。また病気の時も鍼など使わず、言霊信仰により血が出てしまったときなどは「汗」と言い替えられたりしていました。。
10時になると朝食。
その後昼御座(ひのおまし)という場所で政務を行います。正午の昼食は儀式の色合いが濃く、30皿近い日本中から集められた食材が並びます。特筆すべきは「目下一尺鯛」。食卓には寸法が一尺の鯛が必ず供されました。
夜は、夜御殿(よんのおとど)と呼ばれる寝室に入ります。そこでは部屋の中にさらに屏風で仕切られており、繧繝縁の畳を二層に重ねられており、初夜は必ずここで迎えることになっています。
それは後年になり生活の場を「御常御殿」に移してからも、変わりませんでした。
天皇が通る廊下は「御拝道廊下」と呼ばれ、臣下が通る廊下とは別になっており、畳には朱の縁が使われています。
風呂は20畳ほどもある板張りの「御湯殿(おゆどの)」で、おつきの女官に湯をかけさせ身を清めます。
清涼殿には堂上公卿(とうしょうくぎょう)と呼ばれる公家のみ昇殿を許されていました。女官もその公家出身の者だけだったと言います。