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名前はまだ無い…夏目漱石「吾輩は猫である」のモデルの猫は本当に名無しだった

名前はまだ無い…夏目漱石「吾輩は猫である」のモデルの猫は本当に名無しだった

実際に猫を飼っていた夏目漱石

文豪・夏目漱石の名作『吾輩は猫である』は、このような書き出しで始まります。

「吾輩は猫である。名前はまだ無い」

ここから分かるように、この作品の主人公の「猫」には名前がありませんでした。しかも最後は、名前をつけられないまま亡くなってしまいます。

現代の愛猫家なら口を揃えて「かわいそう!」と言いそうなエピソードですが、実は夏目漱石が飼っていたこの「猫」のモデルの猫にも、本当に名前がなかったことをご存知でしょうか?

漱石一家と猫とのエピソード

夏目漱石が「猫」を飼い始めたのは、彼がまだ作家として一流と呼ばれるようになる前のことでした。

当時の漱石は作家業だけでは生計を立ててはいけず、大学で英語の教員もしていました。そのストレスもあってのことでしょうか、彼はやがて神経衰弱となり、イギリス留学から帰国する頃からは妻子にきつく当たったり、夜中に騒いだりと、人が変わったようになってしまったのでした。

千駄木にあった夏目家に、トラ模様混じりのグレーがかった黒い子猫がやってきたのは、そんな時期のことでした。

生まれて間もない小さな子猫は、猫が嫌いな漱石の妻・鏡子さんが何度追い出しても、いつの間にか夏目家に上がり込んでしまいます。それを見かねた漱石が「飼ってやったらいいじゃないか」と言ったことで、「猫」は晴れて夏目家の一員となったのでした。

この猫を見たあんま(マッサージ)師のおばあさんは、鏡子さんにこう言ったそうです。

「このような全身が真っ黒な猫がいる家には、福が舞い込みますよ」

それが実現したことは、皆さんご存知のとおりです。夏目漱石はその後「猫」をモデルにした小説『吾輩は猫である』を発表し、一躍人気作家の仲間入りを果たしたのでした。

2ページ目 猫の死

 

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