紙芝居屋の意外な歴史【1】ルーツは江戸時代の幻灯と、明治・大正時代の紙人形芝居:3ページ目
紙芝居のルーツは江戸時代の幻灯「写し絵」
この元祖紙芝居もまた、前身となる芸能がありました。それは江戸時代に流行した寄席芸「写し絵」。ガラス板に描いた絵を、幻灯機によってスクリーン(和紙の幕)に映写するというものです。
しかもただ映すだけでなく、これもパラパラ漫画のように何パターンかの原画を用意し、絵が動いているように見せます。さらに背景用、人物用など何台もの幻灯機を駆使してダイナミックな画面を作り、語りや鳴り物を加えてドラマを作りました。
後に「アニメーションの原点」と呼ばれる写し絵は、江戸庶民の心をつかみ、寄席や屋形船で披露されました。説経節・歌舞伎・文楽・落語などから題材をとった演目が多く、怪談も人気があったようです。
他に表現方式として「絵解き」や「のぞきからくり」の影響も考えられるなど、諸説あるものの、この写し絵が紙芝居の直系の先祖であるというのが通説になっています。写し絵と紙芝居は、全く違う芸能と感じるかもしれません。しかしどちらも「移り変わる絵に語りを乗せて、物語を表現する」という点は共通しています。