ツルだけじゃない!狼と猟師の友情物語、神奈川に残る伝承「オオカミの恩返し」を解説:2ページ目
供えられた山ウサギ
そんなことがあって、翌日の明け方。源作のおかみさんが雪隠(用足し)のため、戸を開けて一方外に踏み出します。
「ん?」
足元に、何やらやわらかいものを踏みつけた感触が伝わりました。一体何ごとかと驚いたおかみさんは、急いで源作を叩き起こします。
源作は寝ぼけ眼(まなこ)で提灯を取り出すと、まだ暗い中を照らしてみました。
するとそこには、一羽の山ウサギが供えるようにおいてあります。たいそう立派な毛並みで、よく見ると、オオカミの牙痕が刻まれていました。
「なるほど、これは昨日のオオカミが持って来ただな」
合点した源作はおかみさんに、オオカミの喉に刺さった骨をとってやった話をします。昨夜のうちに獲った山ウサギを、こうして恩返しに持ってきてくれたのでしょう。
めでたしめでたし。
別バージョン「オオカミの恩返し」
とまぁ、これがオオカミの恩返しというお話しです。ちなみに、このエピソードは神奈川県内で他にもバリエーションがありました。
【丹沢の山奥で】
ある猟師がまったく獲物を獲れずにいたところ、一頭のオオカミに遭遇。喉にトゲが刺さっていたのでとってやると、翌朝に野ウサギや野鳥が積み上げられていた。
【津久井郡篠原村にて】
フサという娘が嫁ぎ先を飛び出して故郷へ道中、峠道でオオカミに出くわす。喉に刺さっていた骨をとってやると、翌朝に一羽の野ウサギが戸口に置いてあった。
大きく分けて「猟師バージョン」と「娘バージョン」があるようです。他にも大井町で似たような恩返しエピソードがあると言います。
いずれも心温まるエピソードですが、出戻ったフサはその後どうなったのか、少し心配になりました。
まぁ優しくて度胸もある彼女ですから、何があっても何とか乗り越えたことでしょう。

