30年間、小さな庭を見つめ続けた画家・熊谷守一 ──名誉より「自分らしい暮らし」を選んだ理由【後編】:2ページ目
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名誉より、自分らしい暮らしを選ぶ
1967(昭和42)年、熊谷守一は文化勲章の受章者に選ばれました。
芸術家にとって最高の栄誉ともいえる出来事ですが、守一は辞退しています。
理由は「これ以上、人が来てくれては困る。」
さらに「礼服も作りたくない」と話したとも伝えられています。
1972年には勲三等も辞退しました。
名声や肩書きよりも、自分の生活のリズムを守ることを大切にしたのでしょう。
熊谷守一が残した言葉
熊谷守一は『私の履歴書』の中で、こんな言葉を残しています。
「下品な人は下品な絵をかきなさい。ばかな人はばかな絵をかきなさい。下手な人は下手な絵をかきなさい。」
少し強い言い方ですが、人の真似をする必要はない、自分らしく生き、自分にしか描けないものを描けばいい──そんな思いが込められていたのでしょう。
97年の生涯を通して、熊谷守一は流行や評価を追いかけることなく、自分の心が動くものを描き続けました。
遠くへ旅をしなくても、身近な世界には新しい発見があります。
一本の木や一匹の猫、足元を歩く小さな蟻でさえ、じっくり見つめれば昨日とは違う表情を見せてくれます。
熊谷守一が30坪の庭で見つけたのは、特別な景色ではありませんでした。
何気ない日常の中にある豊かさです。
だからこそ、半世紀以上が過ぎた今も、その作品は多くの人の心を静かに惹きつけ続けているのかもしれません。
参考文献
- 藤森武 『独楽 : 熊谷守一の世界』
- 長野重一・飯沢耕太郎・木下直之編『日本の写真家 9 安井仲治』、岩波書店、1999年。
- 田村祥蔵『仙人と呼ばれた男―画家・熊谷守一の生涯』中央公論新社、2017年。
- 福井淳子『いのちへのまなざし―熊谷守一評伝』求龍堂、2018年。
- 古川秀昭『熊谷守一 気ままに絵のみち』(ミネルヴァ日本評伝選)ミネルヴァ書房、2019年。
- 熊谷守一(絵)、ぱくきょんみ(文)『はじまるよ』福音館書店、2019年。
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