『豊臣兄弟!』おのれ、村重!妻・だし絶叫…命惜しさに逃げた夫と、命を捨て家臣を救った別所長治の残酷すぎる対比:5ページ目
自分の命で「皆の命を救う」決断をした別所長治
今回、「死にとうない!」と、凄まじいまでの「生」への欲を感じさせた村重に対して、自分の「生」を賭けて皆の命を救おうと決意した別所長治(下川恭平)の「主人」としての潔さが際立っていました。
ずっと従っていた叔父の別所賀相(田中美央)との三木城籠城は2年ほどに及びました。けれど、とうとう食糧も枯渇し『三木の干殺し』と呼ばれた壮絶な戦いも終焉を迎えます。
降伏するように告げにきた秀吉(池松壮亮)の申し出を叔父・賀相は拒絶し家臣らに討ち取らせようとするも、家臣はすでに調略されたあと。
断固として降伏を拒絶する叔父に対し、長治は「最期ぐらいは、わしが決める」と言います。
先に豊臣側についていた叔父の別所重棟(忍成修吾)が、そんな長治に「ご立派になられました。」と伝える場面は、その前の村重の場面が酷かっただけに、泣けました。
「降伏の申し出お受けいたす」という長治に頭を下げる豊臣勢。自分らの命と引き換えに、飢えで疲弊した兵たちの命乞いを願います。
「ちょうど去年の今頃もこうしてあの花を眺めておった。」と庭を眺め、泣きながら「あのとき間違いに気づいておればの。無念じゃ」と長治。
豊臣勢の皆が庭に降り立った長治の背中に向かって平伏するなか、長治は花を見上げてふと微笑みました。
『播磨別所記』(大村由己著)によると、降伏に対し兵たちの命は取らないと約束した秀吉は「末期の酒」となる酒を差し入れたとか。
ささやかな別れの宴のあと、長治は3歳の子と妻の胸元を貫いたあとに切腹しました。
残された長治の辞世の句。
「今はただ うらみもあらじ 諸人の いのちにかはる 我身とおもへば」
(自分ひとりの犠牲で多くの人の命が助かることを思えば、今はもう敵に恨みさえも感じない)
そして、共に亡くなった長治の妻の句。
「もろともに 消えはつるこそ嬉しけれ をくれ先だつるならひなる世を」
(夫婦はどちらか先に逝き、あとに残された者が悲しむのが世の習わし。夫と一緒にこの世から消え去ることができるのは心から嬉しい)
立派な最期を覚悟した夫と共に、手と手を携えて逝く覚悟をした妻。
夫に残され、二度と会うこともないままに独り気高く最期を迎えた妻。
二組の夫婦の対比が胸に刺さります。
「何もかもが思った通りにはならぬ。」
だしの処刑を最期まで見守り「こんな結末にしたくなかった」と泣く小一郎に「傲慢じゃ。助けられた命もあることを忘れるな。何もかもが思った通りにはならぬ。」という秀吉。
以前、秀吉を信じ援軍を待ちわびていた尼子再興軍総大将・尼子勝久(渡邉蒼)と、家臣の山中幸盛(山中鹿助/廣瀬友祐)を、結果的には裏切り見捨て置き去りにした……一時的に記憶喪失になるほど苦しんだ、あの時の自分に言い聞かせているようでした。
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参考:
荒木村重史料研究 信長公記が村重をおとしめた 山脇 一利
播磨別所記



