『豊臣兄弟!』おのれ、村重!妻・だし絶叫…命惜しさに逃げた夫と、命を捨て家臣を救った別所長治の残酷すぎる対比:4ページ目
独り茶を練るその胸中に浮かぶものは
だしを斬首する刀に水をかける場面と、暗い茶室で(逃げた先の尼崎城か)村重が柄杓で湯を器に注ぐ場面が被ります。
一人、茶を練る村重。その器は、有岡城から持ち出したものなのでしょうか。
茶道の心は『和敬清寂』。茶席の主人と賓客が、互いに心開いて仲良くし、お互いに敬い合い、心清らかに迷いのない気持ちに……という心得と言われています。
明日をも知れぬ命を生きる戦国武将は、刀を持つことが許されない茶室は、唯一命の心配をすることなく心安らげる場所だったとか。
無心に茶を点てる時間は、自分自身と向き合う重要な時間。
茶碗の中をひたすらに見つめて茶を練る時間を独り過ごす村重は、心静かではなかった気がします。残された皆が処刑されることはわかっていたでしょう。
守ると言ったのに見殺しにした妻の嘆き、処刑される家臣の妻子の苦痛の叫びや悲鳴が聞こえ、悶え苦しむ幻影はまざまざと浮かぶため、必死に茶を練ることに没頭しようとしたのかもしれません。
どんな理由があるにせよ、彼らを処刑に追い込んだという慚愧に堪えない思いは消えることはなかったでしょう。
荒木村重家臣らの処刑の場となった、七松城跡(兵庫県尼崎市・七松八幡神社境内)には『七松城落城 なくなられた武士及び家族 故六百二十余人之碑』があります。
