【豊臣兄弟!】お市が長政を介錯した衝撃ラスト…“終焉と滅亡”が描かれた第17回『小谷落城』を考察:2ページ目
「すぐに楽にしてさしあげまする」お市の介錯
「豊臣兄弟!」チーフ演出・渡邊良雄氏のインタビュー記事によると、第18回からは『羽柴兄弟!』という新しいフェーズに入るため、「第17回は今までのピリオドになる回」にしようという意図があったそうです。
確かに、ひとつの時代の幕引きが行われたという印象がありました。
過去数回に渡り、信長とお市の兄妹関係、信長と長政の間に育まれた兄弟関係、そして長政とお市の愛が深まっていく夫婦関係を、時間をかけて丁寧に描いてきた「豊臣兄弟!」。
兄弟同士の愛情、夫婦の愛情がきめ細やかに描かれただけに、その後待ち受ける『小谷落城』の日が来ないでくれと願いたくなるほどでした。
第10回『信長上洛』のとき、嫁ぐ前のお市が、居合術の稽古をし真剣を手に斬り落とし納刀をやる場面が描かれていたのを覚えている人は多いでしょう。
あれは、最愛の兄の「弟」にはなれずとも剣の腕前はある、いつでも兄のために役立てるという意味かと思っていましたが、今回の介錯につながっていたのですね。
長政をお市が介錯するという異例の演出に、「涙が止まらなかった」「お市の悲しみと覚悟が辛い」と絶賛する声が多い一方で、「女の介錯などありえない」(※)「そんな簡単に介錯はできない」という声も。
実は、「長政の切腹をお市が楽にする」ストーリーはこのドラマの制作初期に決まっていたそうです。
政略結婚で、最初は打ち解けなかったものの、長政の実直で誠実な人柄に触れるうちに夫と深く心を通わせるようになったお市。
夫と心が通い合ったからこそ「あのラストに説得力が生まれるのではないかと考えた」と渡邊氏は考えたそうです。
「お市は、ただ『夫に寄り添う女性』ではなく『主体性を持つ人物として描きたいという意図から、長政との最期の場面の形になった』」……という物語設計には納得です。
介錯する時、「すぐに楽にして差し上げまする」と長政に近寄り「私は変わりませぬ。いつまでもあなた様をお慕いしておりまする」と訴えたあとに、声には出さず「ごめん」と言い、介錯したお市。
長政が「そなたが大好きじゃった」と過去形で言ったのに対し、これからも生きていくお市が、「いつまでもお慕いしておりまする」と、進行形で伝えたのが胸に刺さりました。
この後、柴田勝家(山口馬木也)と再婚するのは有名な話。けれど、たぶん「(長政を)お慕いしておりまする」と進行形で伝えた通り、お市にとって最愛の相手は長政だけなのではないでしょうか。
再婚時点でお市35〜36歳、勝家は60〜61歳で、25歳ほどの年齢差があったそう。また結婚も、最期を迎えるまでわずか7ヶ月ほどという短期間。勝家は、夫というよりも、もしかしたら、誰よりも信頼できて頼りになる保護者のような存在だったのかもしれません。
※「女の介錯」:九州・筑後国(現在の福岡県)の領主、黒木家永という武将が切腹したとき、13歳の実の娘が父の介錯をしたという話があります。
