江戸時代の農民は“無学で貧しい”は誤解!世界を驚かせた当時の農民たちの教育と技術力:2ページ目
マニュアルの存在
識字率の高さは、農民の生活を単なる読み書き以上のレベルへと押し上げました。
江戸時代の農村は技術の改善に貪欲であり、特に養蚕技術は世界最高水準に達していたのです。
幕末に日本が開国すると、生糸は瞬く間に最大の輸出品となりました。それは農村に、高品質な生糸を大量生産できる技術基盤がすでに完成していたからです。
各藩は養蚕を奨励し、江戸後期には暖房を用いて蚕の成長を早める高度な技術まで開発されました。さらに驚くべきことに、養蚕に関する技術書は百冊以上も出版されていたのです。
その中には千部以上刷られたベストセラーもあり、当時の出版事情を考えれば驚異的な普及率です。
例えば元禄十五年に出版された『蚕飼養法記』などは、現代でいう体系的なマニュアルとして機能していました。
農民たちがこれらの本を読み、内容を理解して実践したからこそ、これほどの需要が生まれたと言えるでしょう。
文字が読める農民は、自らの経験を「知」として蓄積する能力を持っていました。この知の集積こそが、日本の生糸を世界一の座へと押し上げた真の原動力だったのです。
