『べらぼう』“見たい…” ていの腐女子な本音に心揺らいだ歌麿を考察——プロジェクト写楽、始動【後編】:4ページ目
すでに「蔦重は二の次」になっている腐女子なセリフに感動
ていは「見抜かれましたか。」といいつつ、「私の本音を申せば……見たい。二人の男の業と情、因果の果てに生み出される絵というのものを見てみたく存じます。」と、真剣に語ります。
「これでも本屋の女房。さがと申しましょうか。」というていの顔をじっと見つめる歌麿。絵師としてこんな風に言われてしまったら、心が動きますよね。
ていの絵師の心を鷲掴みにする語彙力、表現力にはまさに感服。「さすがBL好きの腐女子」「究極の腐女子」「おていさん、それを現代では腐女子というのよ」と、SNSでは“ていさんは、実は腐女子のはしり説”が盛り上がっていました。現代要素を盛り込む森下脚本なので、わざとこういうセリフを入れてきたような気がします。
ていが、身を削って夫にひたすら黙々と尽くすタイプの一般的な良妻だったら、ここまで“ていさんファン”は盛り上がらなかったでしょう。
博識ながら超堅物で融通が効かない女性かと思えば、夫の減刑の嘆願に乗り込んだり、奉行所で沙汰を下されたくせに減らず口が止まない夫をぶん殴ってこれ以上状況が悪くならないようピンチを凌いだりする度胸の持ち主。
意外と、「外国に売り出す」話に野望を抱いていたり、次郎兵衛兄さん(中村 蒼)が「俺の顔相は天下取りの相だといわれた」と与太話に「なんと!」と真面目に信じたりする面白い面はちょいちょいありましたが。
「夫のために頭を下げる、尽くす妻に憐れみをください」ではなく、私が「見たい……」と伝えるところは、もはや「蔦重の妻として」が二の次になっているのがいい。
「本屋の私が見たい」と主張し、「男二人の業と情、因果の果てに生み出される絵」と露骨なまでにBLファンテイトで、歌麿のやってみたい欲を炙り出す言葉。ここまで言われたら絵師としても本望ではないでしょうか。
ドラマの前半では、蔦重に腹をくくって仇討ちに参加することを勧め、「ふんどしからお金をたっぷりふんだくって、贅沢でふざけた騒ぎを」と煽ります。そして「これが春町先生の供養に」と思慮深い言葉でしめくくり、蔦重の心を決めさせました。そして後編では、袂をわかった“弟”歌麿の気持ちを変えて戻る決心をさせました。
森下脚本、ていの名台詞の数々、橋本愛さんの演技力、すべてが相まった見事な流れでした。
歌麿がいよいよ「プロジェクト写楽」に参入!
一方、蔦重は重政先生に頭を下げて謝り、二人は和解。重政に具体的な目鼻口などのパーツの指示書を渡しました。そこに突然現れたのがていと歌麿でした。
歌麿が戻ってきたところで、今回は終わりました。次回の予告では、絵を描く歌麿を中心にチーム蔦重たちが集まって手元を覗き込んでいるシーンがありました。これから平賀源内が描いた写楽の役者絵の指南をしていくのでしょう。
そして、江戸に源内生存説がどんどんと広まり、傀儡師・一橋の耳にも届く……と思うとワクワクしますね。(公式から最終回の映像が発表されたのを観ると、「まだまだ先延ばししてくれ!」という気持ちですが。)
1年間続いた「べらぼう」も最終回まで残り3話。もうすでに気持ちは“ロスモード”ですが、見守りたいと思います。

