『べらぼう』大河史に残る、春町”泣き笑いの死”。史実をもとに実際の生涯や「辞世の句」を解説
ふんどし野郎こと松平定信(井上祐貴)の御政道を皮肉った『天下一面鏡梅鉢(作:唐来参和)』『鸚鵡返文武二道(作:恋川春町)』が大いに評判を呼び、調子に乗っていた蔦重(横浜流星)の元へ、奉行所より絶版(発売禁止処分)のお達しが下されます。
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前年に発売された『文武二道万石通』も巻き添えで絶版とされてしまい、主君からお叱りを受けた朋誠堂喜三ニ(尾美としのり)は筆を折らざるを得ませんでした。
一方の恋川春町(岡山天音)は主君・松平信義(林家正蔵)に逐電するよう勧められ、その手はずも整っていながら、やはり主君に対する忠義をまっとうする道を選びます。
武士としては腹を切り、戯作者としては豆腐の角に頭をぶつけて死ぬ……どこまでも大真面目な春町先生の最期に、蔦重たちは泣き笑いで報いるよりありません。
今回の「新たな人生に希望を持たせておいて、絶望に突き落とす」展開に、多くの視聴者たちが胸を抉られたことでしょう。
それではNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第36回放送「鸚鵡(おうむ)のけりは鴨(かも)」、気になるトピックを振り返ってまいります。
今さらながら…「老中は気安く町人と会わない」現実
いきなりの絶版処分に納得がいかない蔦重は、鶴屋喜右衛門(風間俊介)に「越中守様と会って話がしたい」と言い出しました。
かつて老中の田沼意次(渡辺謙)へ直訴したように、腹を割って話せば解りあえるはず……とでも思ったのでしょう。
しかし大河ドラマならいざ知らず、普通はお武家様が町人風情と気安く会ってくれたりはしないものです。
無理に会おうとすれば、ましてや直訴・諫言などすれば……それこそ、おていさん(橋本愛)が言うように「旦那様が身二つに割られるだけ」になるでしょう。
蔦重「……俺らだって、いい世にするためにやってんだ、って……」
そもそも「世の中をよくする」という発想自体が、近世以前においては不遜極まるものとされました。
なぜなら「今の世の中=お上の御政道に不満がある」ってことですからね。
現代みたいに誰もが「身二つに割られる」ことなく、安全に政治の批判や社会に対する提言などができるようになったのは、ごく最近のこと。
物語の最終盤にかけて、蔦重はその現実と直面することになるのでしょう。

