【べらぼう】平賀源内(安田顕)の化身?鳥山石燕(片岡鶴太郎)が最期に視た「雷獣」とはどんな妖怪か:2ページ目
雷獣にまつわる伝承の例
東日本を中心に様々な伝承を遺した雷獣。その一部を紹介したいと思います。
激しい雷雨の日に空を飛び、転げ落ちると激しく木を裂いたり人を傷つけたり、大きな被害をもたらした……駿河国/江戸後期『駿国雑誌』より
猫のような姿で、前足を広げるとコウモリのような飛膜があり、50間(約90m)以上を飛ぶことができた……富山県/明治時代「北陸タイムス」より
「面如蟹額有旋毛有四足如鳥翼鱗生有釣爪如鉄(顔はカニのようで額に毛が生え、四本足で鳥のような翼を生やし、鱗と鉄のようなカギ爪があった)」……安芸国/江戸後期『奇怪集』より
天からタツノオトシゴのような姿の雷獣が落ちてきて、雷龍と名づけられた……因幡国/寛政3年(1791年)
雷と共に落ちて来た雷獣を、ある者が捕らえ、煮て食った……出羽国/江戸後期『甲子夜話』
江戸の和泉屋吉五郎というものが鉄製の籠で雷獣を飼っていた。姿はムジナかモグラに似て、猪のような鼻をしている……武蔵国/江戸中期『類聚名物考』より
雨乞いの山に落雷があり、アライグマに似た獣が目撃される。雷が鳴る度に奇妙な動きをすることから、雷獣ではないかと噂された……神奈川県/昭和2年(1927年)
20世紀の昭和に入っても、人々が雷獣の存在を身近に感じていたとは驚きです。果たしてこれらの動物らは本当に雷獣だったのか、興味は尽きませんね。
終わりに
今回は劇中で鳥山石燕が最期に描き遺したとされる雷獣について紹介してきました。
雷獣は、石燕にその姿を写しとって欲しかった源内の化身、あるいは怨霊なのでしょうか。
化けて出た理由は、盟友であった田沼の死を冒涜する松平定信(井上祐貴)への怒りか、あるいは権力批判に固執する蔦重(横浜流星)を諫めるつもりかも知れません。
果たして雷鳴は何を告げ、人々にどんな影響を与えるのか……次週も見守っていきましょう!
※参考文献:
- 安部晃司ほか『日本の謎と不思議大全 東日本編』人文社、2006年10月
- 斉藤小川町ほか『日本の謎と不思議大全 西日本編』人文社、2006年10月
- 日野巌『動物妖怪譚 上』 中公文庫、2006年12月

