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『べらぼう』書をもって世に抗う!ふんどし野郎(松平定信)の締め付けに抵抗する蔦重の戦い【後編】

『べらぼう』書をもって世に抗う!ふんどし野郎(松平定信)の締め付けに抵抗する蔦重の戦い【後編】:2ページ目

松平をおちょくる黄表紙と倹約なんかクソ食らえな豪華本

チーム蔦重に、力を貸して欲しいと頭を下げる蔦重の作戦は2つ。

わざと田沼政治を批判して松平の今の政治をも褒めあげることで、「一見、リスペクトしているように見せかけて、実はおちょくる」という内容の黄表紙本を出すこと。

意次に「書を持って抗う。そのためには田沼様を貶める思う」と断りを入れたのはこれが狙いだったのです。もちろん、意次もその狙いにピンときていたのでしょう。

「ふんどし野郎は、自分のいい噂を金払って提灯記事を書かせるようなやつだ。田沼様を叩くような内容なら見逃すのでは」と言います。

そして、もうひとつは歌麿(染谷将太)が「やっと自分の絵が描けた」と持ってきた植物や虫の絵です。それを、質素倹約ムードに反抗するべく、思いっきり贅沢な仕立てにして、狂歌を付けた豪華狂歌絵本にすると宣言します。

最初は乗り気ではなかった太田南畝(桐谷健太)も、歌麿の絵を見てクリエイティブ魂が呼び覚まされました。葉っぱに乗った毛虫の絵を見て

毛をふいて 傷やもとめん さしつけて
君があたりに はひかかりなば

と読みます。

「毛を吹いて瑕を求む」は韓非子の言葉で「人の欠点を強いて暴こうとして、自分の弱点をさらけだす」という意味。毛虫が夜這いを掛けようとして、うまくいかないというようなニュアンスでしょうか。

「毛虫が勢い混んで夜這いをしたとこで振られちまうよな」
「または、きれいごとを引っぺがして、お前の本性を暴いてやるともとれるな」

と盛り上がる狂歌師たち。

「今、お前が仕掛けた『読売』の提灯記事が功を奏して、単純な町人はそれに騙されてお前をちやほやしているが。松平定信よ、そのきれいごとをひっぺがして、その本性を暴いてやる」とも取れますね。

実際、意次が町人たちに「お救い米」を配ろうと奔走したのにも関わらず、米の供給をわざと止めたのは定信。米が手に入らずブチギレた町人たちが「打ちこわし」をしている最中、寝床で寝そべり微笑みながら黄表紙に魅入る定信。そんな事実を知ったら、まるで“推し”のように、キャッキャッしていた女性たちも、ドン引きするのでは……と想像してしまいました。

3ページ目 質素倹約の世の中なんかごめんだ!反抗の狼煙をあげる屁踊り

 

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