「べらぼう」終わらない悲劇、次に犠牲になるのは?殺された母子と壮絶な将軍の最期…二つの無念の死【後編】:3ページ目
「天となってお前を見ていることをゆめゆめ忘れるな」
死の床に伏せっていた家治は、「すべて裏で糸を引いているのは一橋」だと分かっていました。しかしながら証拠を揃えることは難しいだけではなく、さまざまな事件が御三卿の陰謀であることが表沙汰になれば、幕府の権威は失墜するでしょう。
そこで、最期の力を振り絞り、鋭い言葉で治済を斬り付けました。
西の丸(一橋豊千代/長尾翼)に「田沼主殿頭は…まとうど(※)の者である…臣下には 正直な者を重用せよ…」と伝えたあと、治済を亡くなった息子・家基(奥智哉)と間違っているかのように装い、眼光鋭く詰め寄ります。
「天は見ておるぞ!天は天の名を驕るおごりを許さぬ!これからは、余も天の一部となる…余が見ておることを ゆめゆめ忘れるな!」と力を振り絞って告げました。
「俺はお前がやったことすべてを知っている。お前は『天』になり全てを操れるようになったと奢っているかもしれないが、俺も死んだら『天』になる。俺はお前のそばにいて、ずっとやることを見ているからな」という宣戦布告です。
一橋の所業と知りながら暴くことができなかった恨み言などではありません。信頼してきた田沼意次が築いてきた政治を、己が牛耳りたいという欲望だけで破壊しようとする一橋に対しての、将軍としての憤り・怒りと、それだけは許さないという意思表明です。
常に品位を保ちながらも、田沼意次の信頼を裏切ることなく守り抜いた、誇り高く将軍だったと思います。
※まとうど:愚直なほど正直で律儀な者
衝撃的過ぎたふくと赤ん坊の無念の死。そして江戸城の中での将軍の無念の死は、これから江戸市中にも幕府にも大きな変化をもたらしていきます。
庶民たちの間に流れる不穏な空気、新之助の決意、追い詰められていく田沼家、そして大きな状況の変化は蔦重のビジネスにも大きな影響を及ぼしていくでしょう。
辛い展開が待ち受けている予感もしますが、しっかりと見届けていきたいと思いました。



