『べらぼう』幻の英雄・佐野政言が歪めた真実。ついに意次・誰袖・蔦重の「敵討ち」が始まる【前編】:4ページ目
一橋治済に「覚悟」を伝える田沼意次の凄み
志なかばで無念の死を迎えた平賀源内の志も、息子の山城守(意知)の志も、田沼意次の心にはしっかりと生き続けています。
意知亡き後、憔悴していた意次ですが、蔦重の言葉も後押しとなり息子の遺髪を胸に、すべての黒幕である一橋治済(生田斗真)への「敵討ち」を決意し、心の炎を燃え上がらせました。
同じように愛する息子の命を奪われた徳川家治(眞島秀和)に「かように卑劣な手で奪い取れるものなど何一つないと」と言われ、「目に物を見せてやりとうございます」と続けた意次の言葉には力強さがみなぎっていましたね。
そして城内で、治済と出会い一瞬腰の刀に手をかけるも意知の遺髪を入れた胸元に滑らせます。いつものように芝居がかった「お悔やみ」を述べるもののそれを力強く遮る意次。
「志は無敵です」「もう二度と、毒にも刃にも倒せぬ者となったのでございます」と治済に向かって言った言葉。
“徳川家基(奥智哉)、松平武元(石坂浩二)、平賀源内、そして意知。お前の奸計で毒や刃で殺されたことを俺は知っている。けれど、もう二度とお前は俺を倒せない”
……ということを言外に含ませ宣戦布告をしたのだと思います。
さらに挨拶をして、立ち去ると見せかけて素早く後に回り込み「それがしには、やらなければならないことが山のようにございますゆえ」と低い声で告げる場面は、さすが名優、鬼気迫る凄みがありました。
いつも余裕をかましていた一橋治済が、呆けたような悔しそうな顔をして立ちすくんでいたのが印象的でしたね。
意知の死を知らされたとき、「死んでもうたか〜。人の恨みを買うとは恐ろしい」とぬけぬけといい、その側で黙々とうれしそうにカステラを食べ続ける幼い徳川家斉。心底、憎たらしい二人でした。
けれども、最終的な目的だった田沼意次の心をへし折ることはできず、逆に今までの分の恨みもあり怒りの炎を燃え上がらせたてしまった。さぞかし、計算違いだったことでしょう。ざまあみろ!と思ってしまいました。
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