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『べらぼう』胸が詰まる“桜”の演出…田沼意知と誰袖の幸せな桜、悲劇を招いた佐野の枯れ桜【前編】

『べらぼう』胸が詰まる“桜”の演出…田沼意知と誰袖の幸せな桜、悲劇を招いた佐野の枯れ桜【前編】:4ページ目

“男前が好き!”の言葉で苦界吉原を生き抜いてきた誰袖

落籍の日、武家装束を纏い髪型も化粧も変わり、すっかり若奥様という落ち着いた雰囲気になった誰袖。

蔦重に別れの挨拶をする時、突然両手で蔦重の顔を包み「このお顔には随分、お世話になりんした」と目を潤ませました。「嫌なお客のときには、いつも心のうちで兄さんの顔を被せておりんした。」と。

少女の頃から「男前が大好き!」と公言して憚らない押しの強い性格だった彼女。花魁になってからも「好き好き」モードは変わらず、明るいけれど本音のわからない女性でした。

けれども、トップクラスの花魁とは言えども、実はそういうキャラを演じ吉原の勤めを耐え忍んできたのだなと思うと、改めて吉原という一見華やかな場所が、いかに女性にとって“苦界”であるかということを感じます。

心の中に「間夫」さえいれば生きていけるという腹を括って生きてきた瀬川とは異なり、誰袖は、「男前」にこだわることで自分をささえ吉原を生きてきたのですね。

そんな、彼女を本にしたいという蔦重。「幸せをつかんだ花魁のストーリーは吉原で生きていく女性たちの励みになる」と。

これぞ、瀬川と蔦重の二人が見る“夢”。

「吉原を、女郎がいい思い出、いっぺぇ持って大門を出て行けるとこ」そんな場所にすると話していたことを思い出します。

身請けされ吉原を出ていく瀬川に贈った本が『青楼美人合姿鏡』でした。

吉原の「仲之町」通りの桜並木で花びらをはらはら散らす桜を見上げる誰袖と蔦重。

「今夜は花雲助(意知の狂歌名)に会えるのか」と聞かれ、「今宵は2人、花の下で月をみようと」微笑む誰袖。本当に幸せそうな笑顔でした。

そんな微笑む誰袖の姿に被せるように、江戸城では、刀を手にした佐野政言(矢本悠馬)が田沼意知に斬り掛かかる……まるで鬼のような脚本の展開に悲鳴をあげた人も多かったようです。

桜を仰ぎ見るという行為でも、将来の幸せを想像し微笑みながら見上げる男女もいれば、無念の思いで見上げる息子もいる。そして、花をつけない老木の桜に腹を立て、抜刀して斬りかかる老人もいる。

【後編】では、哀し過ぎる運命を辿った“桜”と “父と息子”を考察していきます。

【後編】の記事はこちら

『べらぼう』明暗分かれた“桜”…田沼意知と誰袖の幸せな桜と、追い詰められ悲劇を招いた佐野の枯れ桜【後編】

大河「べらぼう」の27回『願わくば花の下にて春死なん』。吉原の桜並木を見上げながら、「かをり、とびきり幸せんなれよ。二人で」 と、蔦重(横浜流星)言われ、「言われずとも。誰よりも幸せな二人に」…
 

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