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『べらぼう』ていの家出に瀬川の名シーンが重なる…蔦重を巡る“三人の女”に隠された真意【前編】

『べらぼう』ていの家出に瀬川の名シーンが重なる…蔦重を巡る“三人の女”に隠された真意【前編】:2ページ目

もし「瀬川」が「耕書堂」の女将さんだったら……

もし、瀬川が蔦谷の女将だったら。

絵師や戯作者たち、太田南畝(桐谷健太)ら狂歌師たちとは、丁々発止と地口を入れながら、気の利いた江戸っ子らしい会話を交わし。

田沼意知(宮沢氷魚)のような身分の高い武士とは、鳥山検校に身請けされたときのような、礼儀正しく品格のある妻ぶりを発揮し。

ずぶとくて調子のいい母親のつよは、妓楼の亡八たちを相手にしているときのように上手にあしらい。

店で働く人々には、花魁時代のように気配りがある女将ぶりをみせたのではないか……などと想像してしまいました。

ていの「吉原一の花魁を張れるような、華やかで才長けた方」というセリフで、瀬川を思い出させる。多くの視聴者が「瀬川はどうなった?」という未練を引きずっているのを見透かすように、この時にこのセリフを入れてきたのが面白い脚本だな思ったシーンでした。

願わくば、ここで瀬川の存在を思い出させ、のちの回で、いい人と巡り会って幸せに暮らしている瀬川が、偶然人づてに入手した「耕書堂」の本を手に取り、「夢を叶えたんだね、重三」などと呟きながら微笑むという、そんな場面がでてくるといいなと思いました。

そして、その本は瀬川と蔦重が初めて結ばれた夜、二人で「こんな本を出したい」と語り合った“恩が恩を呼ぶ”ストーリーを元にした『伊達模様見立蓬莱』で、

瀬川が「本にしてくれたんだね」と喜んでいる姿が見たいものです。

ていは瀬川花魁のことも蔦重との関係も知るはずもなく、吉原通いで借金を作って店を潰した前夫のこともあり、蔦重が作り瀬川も登場する『青楼美人合姿鏡』を手にとって読んだとも思えません。

日本橋の本屋の娘にも、“吉原の花魁”というのは、単に美貌だけではなく才能あるトップスターということは耳に入っていたのでしょう。(お店のスタッフが吉原に行きたいと話してましたし、吉原好きの戯作者などが店に始終出入りしていましたし)

3ページ目 「俺が俺のためだけに目利きした、俺のたった一人の女房でさ」

 

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