『べらぼう』差別に挑む蔦重の覚悟!「本」で結ばれたソウルメイト・ていとの出会いを考察【前編】:3ページ目
「吉原者」を真っ向から否定する本屋の一人娘・てい
そんな蔦重は「日本橋に一軒空き店舗ができそう」という情報を入手します。
その店舗は、地本屋・丸屋。一人娘のていは「富は屋を潤し徳は身を潤す。日本橋のためとなる方に御譲りできれば本望です」と、鶴屋(風間俊介)筆頭に日本橋の旦那衆に伝えますが、「吉原の蔦屋耕書堂だけは1万両積まれようとも、お避けいただきたく」と、言います。
生真面目なていのこと。遊郭に対する忌避感や、売れっ子の蔦重に対する僻みのような気持ちからくる言葉かと思いましたが、実は深い訳が。
「行き遅れの娘」である自分に熱心に求婚した男性と結婚するものの、その夫が吉原に入れ込み莫大な借金三昧をしたせいで、大切な「丸屋」は傾き、立て直すことができず、後悔しているからでした。
無念の涙を流していた父親、そんな夫を選んでしまった自分、夫がはまった吉原。それらすべてを許せない気持ちだったのでしょう。さらに、日本橋には、「吉原者には屋敷を売ってはならない」という掟もあります。
どうしたら丸屋を売ってもらえるかと考えあぐねる蔦重の前に、扇屋の旦那(山路和弘)が吉原にツケを溜めている「亀屋」の若旦那を連れてきて、彼の名前で丸屋を買取り、表向きは「賃借」で店を始めようと企むのですが、賢いていに、そのからくりを見破られてしまいます。挙句に地本問屋の間では「吉原者の手に丸屋が渡らないように早く買い手を見つけよう」という話が持ち上がります。
吉原でも、妓楼主たちが「ていが店を売りたいと思うためにはどうしたらいいか?」と皆が知恵を絞ります。一番欲しいものは何だろう?と考えるのですが、いいアイデアは出てきません。大黒屋の女将りつ(安達祐実)が「男?」と呟き、「それだ!」となりますが、「蔦重じゃあ役不足だな〜」とすぐ却下になってしまいました。
実は、りつのていが欲しいもの=「男」という推測は、鋭かったのです。けれども、それはただ「夫」「恋人」という意味の「男」ではありませんでした。
亡八達が「こいつはないない!」と全否定した蔦屋重三郎は、実はていにとって「自分が本当に欲しいと思っているものを、周囲に遠慮して我慢せず、欲しいものを欲しいと言っていいのだ」と気が付かせ、ともに同じ「夢」を見れるソウルメイトだったのです。
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