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大河『べらぼう』殻をぶち破った恋川春町、史実では幕府をも皮肉りついに出頭命令…そして悲しき最期【後編】

大河『べらぼう』殻をぶち破った恋川春町、史実では幕府をも皮肉りついに出頭命令…そして悲しき最期【後編】:2ページ目

北尾政演に本を褒められて謝罪をする春町

そして、【前編】の冒頭でご紹介した耕書堂の忘年会の場面。皆が楽しそうに盛り上がっている中、いつも天真爛漫、スーパー陽キャの北尾政演(山東京伝/古川雄大)が、ひとりすねている様子。

春町の『廓𦽳費字盡』漢字本をみて、これは面白い、自分がやりたかった!と悔しがっているのですが、これは作り手としてはうれしいでしょう。

特に、自分よりも才能があっておもしろい、敵わないと落ち込んでいた政演に、そんな風に嫉妬めいた「褒め言葉」を言われたら、抱いていた腹立ちも氷解しますよね。

春町は、政演に以前の飲み会で暴言を吐いたことを謝罪するために近づき、武士らしく居住まいを正して「申し訳ない」と謝罪します。政演は、率直に春町に対し「(本は)面白かったよ」と言い、謝罪の言葉は「何のことだっけ?」と覚えていない様子。

けれども、ほんとは覚えていたのかもしれません。同じ、絵もかけて戯作もかける二刀流の天才同士。

政演は春町の本を読み、その才能を認め、さっさと水に流して仲良くなりたい!いつか一緒に仕事をしてみたい!と思い、「無かったこと」にしたかったようにも思えます。生真面目でシャイな春町の顔を立てたのかもしれないですね。

“屁” で盛り上がった中で独りぼっちになるも、“屁” で蘇る

そして今回は、一人褌姿になり次郎兵衞兄さんの三味線の伴奏で、“放屁芸”を見せる春町。どうしても屁がでないと口で「ぷ!」と言い、忘年会場は大いに盛り上がりました。

後世にその名や作品を残す、一流のクリエーターの男性たちが、まるで小学生男子のように“屁”で大笑いして盛り上がって踊る姿。

以前は、皆が“屁” で盛り上がる中、孤独を感じて心を閉ざすも、今度は満座の中、自らの“屁” でお笑いをとり皆の中心人物になる……一皮も二皮もむけた恋川春町こと、天才・酒上不埒(さけのうえのふらち)が爆誕した瞬間でした。

お気づきの人もいると思いますが、耕書堂の中で皆が立ち上がり“ぷ!ぷ!ぷ!”で踊っている時、最初は次郎兵衛兄さんの三味線でしたが、突然、ジョン・グラムによる、あの瀬川の花嫁道中「おさらばえ」の涙の感動シーンでかかっていた壮大な曲に変わっていました。

蔦重の目に浮かぶ涙とともに、“屁”なのに、胸のふるえる感動的な場面になっているのが「大河ってすごい」と感じたものでした。“屁”の連発シーンなのに。

平賀源内の「耕書堂」に対する言葉が蘇えるシーンもあり、なかなかに情緒がゆさぶられる回でした。

3ページ目 松平定信の「寛政の改革」を皮肉たっぷりにおちょくる

 

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