
「べらぼう」蔦重、ついに覚醒!吉原者が“作り笑顔”で市中の地本問屋たちを確実に刺し返す!【前編】
「汚ねえやり方もありだって教えてくれたのは、西村屋さんなんで」……
耕書堂に文句を付けに来た地本問屋・西村屋(西村まさ彦)に、にこやかに言い返した蔦屋重三郎(横浜流星)。そして、同じく地本問屋・鶴屋(風間俊介)とは、静かな「微笑み」バトル。
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第20話『寝惚けて候』では、いよいよ、蔦重による市中への反撃が始まりました。
「べらぼう」蔦重vs鶴屋の笑顔に視聴者震撼!そもそも狂歌とは?ほか…史実をもとに5月25日放送回を解説
耕書堂の主人となってからは、着物姿も風格が増し髷もきれいに整い、貫禄が身に付いてきた蔦重。
今回は、「策士ぶり」が光るようになった蔦重、新しく目覚めた「狂歌」の魅力、心強き味方・太田南畝(おおたなんぽ/桐谷健太)の登場などに注目。「来し方」を振り返りつつ「行く末」を考察してみました。
「ふざけんじゃねえ…やったのみんな俺だろ!!」の反撃よ、今!
地本問屋・西村屋との確執は、『雛形若菜(ひながたわかな)』から始まりました。
呉服屋が売り込みたい着物を遊女に着させ、カラーの錦絵にした画集です。呉服屋にとっては着物の広告になるので「入銀」(本の購入予約者が先にお金を払う)させるという仕組み。遊女にとっても、自分の宣材になる写真集のようなものなので、顧客である呉服屋の旦那に入銀をねだります。
このアイデアは、平賀源内(安田顕)からヒントをもらい、蔦重が企画して本として形にします。ところがさっそく呉服屋に営業をかけても、知名度の低い蔦重が作る本には、なかなか話に乗ってくれません。
その頃、すでに有名だった西村屋が「一枚かませてくれ」といい、参加します。
有名な西村屋が参加したことで呉服屋たちも、次々に入銀を快諾。素晴らしい本ができあがるのですが、「西村屋」と「耕書堂」の連名で、江戸市中で本を売ることに鶴屋も鱗形屋(片岡愛之助)も反対します。そして、耕書堂の名前を外し「西村屋ひとり版元」で売ることになってしまいました。
亡八の旦那たちさえ「おめえさえ手を引けば丸く収まる」と言い出す始末。
アイデアも制作もすべて自分がやったのに、手柄だけを横取りされた蔦重。
「ふざけんじゃねえ…ふざけんじゃねえよ!やったのみんな俺だろ!!」の叫びは今だに忘れられ得ません。
200年以上経過した、令和の現代でも「無名の人間の企画や手柄を横取りする」というのは、出版業にかぎらず慣習のようになっているところがありますよね。蔦重の憤りがリアルに伝わってくる場面でした。
今回、策士・蔦重は、西村屋が作り続けている『雛形若菜』に対抗し、売れっ子絵師・鳥居清長そっくりの画風で歌麿(染谷将太)に遊女の絵を描かせ、入金の値段も半額にしその名も『雛形若葉』として呉服屋の旦那にガンガンセールスをかけ、顧客を奪っていきます。
『雛形若菜』の入銀キャンセルが続く中、さらに、西村屋は『吉原再見』を作らなければならないのに、二の次にして「改め」(新情報を収集して編集し直す)を疎かにし、妓楼屋から(たぶん、わざと?)渡された古い情報をそのまま載せクレームの嵐を受けてしまうという始末。
そこで、蔦重に「ずいぶんと汚ねえまねを」と文句を言いに、耕書堂を訪れたところ蔦重に返されたのが冒頭の言葉です。
「汚ねえやり方もありだって教えてくれたのは西村屋さんなんで」
手柄をすべて横取りされ、悔し泣きした蔦重を思い出すと、胸のすく思い。やり手になっていく新生・蔦谷重三郎の誕生を感じました。
2ページ目 「蔦谷さんが作る本など、何一つ欲しくはない」の言葉に微笑みバトル