手洗いをしっかりしよう!Japaaan

大河「べらぼう」編集者の正論が心を削る…蔦重の殺し文句に惹かれた春町、鱗の旦那が託した“夢”を考察【後編】

大河「べらぼう」編集者の正論が心を削る…蔦重の殺し文句に惹かれた春町、鱗の旦那が託した“夢”を考察【後編】:2ページ目

「春町先生の描く絵が見たいのだ」という、熱い蔦重の殺し文句

そんな時に、「話だけでも聞いて欲しい」と現れたのが蔦重です。蔦重の顔を見るなり帰ろうとする春町に、

この先の江戸を描いてみませんか?誰も見たことのねえ100年先の江戸なんてものを」と誘いをかけます。その言葉に、ぐっと惹かれる春町。

さらに、「このネタを鶴屋で使ってもいい」「自分は、春町先生の描く絵が見たいのだ」と熱弁します。

作風が古い、時代に合ったものを書けといわれ、心を削られていたクリエーターが、100年後の江戸などという、荒唐無稽で新しくて面白そうなアイデアをふられ、さらに「このネタを鶴屋でやってもいい。あなたの作品だからこそ見たいんだ。」などと口説かれたら……。

※関連記事↓

大河「べらぼう」に登場!恋川春町が江戸の未来を予想した「無益委記」実際の内容を全ページ紹介!

5月18日(日)に放送された、大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」、第19話「鱗の置き土産」。今回も泣いて笑って、そして泣いて…「べらぼう」らしいドラマチックな展開でしたね。ところで「べ…

作り手としては、心震えます。ここまで、自分の作品を評価してくれる編集者、版元がいるならやってみたい。作り手なら誰でもがそう思うのではないでしょうか。

けれども、傷ついていた春町は念を押します。「俺で良いのか?古臭いぞ、俺は」という春町に「古い?新しい?んなもん鼻くそでしょう。だって先生の書くのは100年先なんですよ!」

これはもうクリエーターにとっては殺し文句です。ほんと、いい意味で蔦重は人たらしだなと感じる場面でした。

そして、一緒にいた朋誠堂 喜三二(尾美としのり)に「鱗の旦那だって見てみてえんじゃないのかな。お前さんの描くこの先の江戸」とダメ押しされ、陥落します。

売るためだけで自分を否定する有能な編集者より、自分を評価してくれる血の通った蔦重と仕事がしたい。これは、そのまま現代にも通じるシーンだったと思います。

歌麿が、春町の画が好きで本を見ながら「ああ、春町だなって。何とも言えねえ味がある」と蔦重に伝えるシーンがありました。「うまい画はいくらでも描けるけれど、味のある画というのは、なかなか描けない」と。

ドラマでは触れていませんでしたが、歌麿と恋川春町は二人とも鳥山石燕(片岡鶴太郎)から絵を学んでいる、いわば同門同士

※関連記事:

「べらぼう」に登場!史実、喜多川歌麿を育てた妖怪画の元祖・鳥山石燕の『百鬼夜行図巻』が圧巻すぎる

今日までに描かれてきた妖怪画の中で、彼が描いた妖怪のエッセンスが入った作品はかなり多いのではないでしょうか?彼とは、江戸時代の絵師・鳥山 石燕(とりやま せきえん)です。NHK大河ドラマ「べ…

歌麿に春町の画を「好きだな〜」と言わせ、ドラマで登場させた春町の『辞闘戦新根』(妖怪がでている)などで、そのあたりを間接的に表現したのかも知れません。

3ページ目 鱗の旦那から託された“夢”と蔦重と瀬川の“夢”が出会う

 

RELATED 関連する記事