大河「べらぼう」編集者の正論が心を削る…蔦重の殺し文句に惹かれた春町、鱗の旦那が託した“夢”を考察【後編】:2ページ目
「春町先生の描く絵が見たいのだ」という、熱い蔦重の殺し文句
そんな時に、「話だけでも聞いて欲しい」と現れたのが蔦重です。蔦重の顔を見るなり帰ろうとする春町に、
「この先の江戸を描いてみませんか?誰も見たことのねえ100年先の江戸なんてものを」と誘いをかけます。その言葉に、ぐっと惹かれる春町。
さらに、「このネタを鶴屋で使ってもいい」「自分は、春町先生の描く絵が見たいのだ」と熱弁します。
作風が古い、時代に合ったものを書けといわれ、心を削られていたクリエーターが、100年後の江戸などという、荒唐無稽で新しくて面白そうなアイデアをふられ、さらに「このネタを鶴屋でやってもいい。あなたの作品だからこそ見たいんだ。」などと口説かれたら……。
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作り手としては、心震えます。ここまで、自分の作品を評価してくれる編集者、版元がいるならやってみたい。作り手なら誰でもがそう思うのではないでしょうか。
けれども、傷ついていた春町は念を押します。「俺で良いのか?古臭いぞ、俺は」という春町に「古い?新しい?んなもん鼻くそでしょう。だって先生の書くのは100年先なんですよ!」
これはもうクリエーターにとっては殺し文句です。ほんと、いい意味で蔦重は人たらしだなと感じる場面でした。
そして、一緒にいた朋誠堂 喜三二(尾美としのり)に「鱗の旦那だって見てみてえんじゃないのかな。お前さんの描くこの先の江戸」とダメ押しされ、陥落します。
売るためだけで自分を否定する有能な編集者より、自分を評価してくれる血の通った蔦重と仕事がしたい。これは、そのまま現代にも通じるシーンだったと思います。
歌麿が、春町の画が好きで本を見ながら「ああ、春町だなって。何とも言えねえ味がある」と蔦重に伝えるシーンがありました。「うまい画はいくらでも描けるけれど、味のある画というのは、なかなか描けない」と。
ドラマでは触れていませんでしたが、歌麿と恋川春町は二人とも鳥山石燕(片岡鶴太郎)から絵を学んでいる、いわば同門同士。
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歌麿に春町の画を「好きだな〜」と言わせ、ドラマで登場させた春町の『辞闘戦新根』(妖怪がでている)などで、そのあたりを間接的に表現したのかも知れません。




