大河『べらぼう』煙草の罠、謎だらけの死、あの名セリフ…平賀源内(安田顕)の去りいく背中を惜しみつつ考察【前編】:3ページ目
天才的なひらめきに優れるも実業家としては
史実でも平賀源内は、クリエーター・学者・技術者としての才能には溢れていたものの、実業家としては失敗や不成功続きだったといわれます。
一生懸命、筋道を立て学問に向き合い、「国益」を考えて『物類品隲(ぶつるいひんしつ)』など後の世に残る著作物を残し、その名は江戸市中で広く知られても、学問は金にならず。
輸入品に頼らずに、織物・陶器・鉱山ほか、産業の普及に乗り出し西洋の模倣ではなく「国産」を作る努力をしても、商売としては成り立たず。
「次はこれがいける!」と閃いても、探究心旺盛で一つのことを徹底的に追求せず次に着手しまうところがあったという人物像も伝わります。一見、明るく笑い飛ばし何もへこたれないいように見える源内ですが、実はそんな自分だからこそ持つ「脆(もろ)さ」も分かっていたのではないでしょうか。
ちなみに、江戸の消費者を対象にした小間物の商いはそこそこ成功したようです。以前もご紹介しましたが、海外から日本に渡ってきた美しい装飾用革「金唐革紙」をよりリーズナブルなものにと「紙」で作った「金唐革紙」を考案。
また、香木の一種「伽羅」を使い銀の飾りをほどこした豪華な「源内櫛」を売り出してみたり、ガラスの裏に水銀を塗った「自惚れ鏡」を作ったり。吉原の遊女に使ってもらうなどPRをして売れたようです。
今回の「さらば源内」のあまりにも辛い激動の展開に、「平賀源内 番外編」として、そういう小間物を創作しては店頭に並べて無邪気に自慢し、何も起こらない1日が過ぎて日が暮れる……そんな平和な源内の姿をぜひ描いて欲しいと思いました。


