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大河『べらぼう』煙草の罠、謎だらけの死、あの名セリフ…平賀源内(安田顕)の去りいく背中を惜しみつつ考察【前編】

大河『べらぼう』煙草の罠、謎だらけの死、あの名セリフ…平賀源内(安田顕)の去りいく背中を惜しみつつ考察【前編】:4ページ目

大工の久五郎が持ち込む「甘い煙草」の謎

16話で長屋を追われてしまった源内のところに、突然大工の久五郎(齊藤友暁)と名乗る人物が現れ、病人や変死が続き「不吉の家」と悪評高い元・神山検校の家を勧めます。

引っ越してからの源内は評判が悪く「狐に憑かれた」などと噂が立つ始末。心配した蔦谷重三郎(横浜流星)が源内の家を訪ねると、漂ってきたのは「甘い煙草の煙の匂い」。家の中に入ると、源内は煙草を片手に見知らぬ侍と話をしていました。

男が去り「あれは誰ですか」と蔦重が尋ねると、「田沼様が自分を案じたのだろう。ある屋敷の図面をひいてほしいと依頼された」と言います。

「死を呼ぶ手袋」を本にしようとする源内

蔦重に、本を依頼された源内は、川家基毒殺事件に着想を得た「手袋にまつわる芝居の筋」を語ります。

(余談ですが。「耕書堂」を構えてからの蔦重は、最初の頃の若々しい緑地の縞紬から、青いちょっと厚みの増した紬になり、半衿も青系の二枚重ねになりぐっと「本屋の主人」という風格が出てきたようですね。)

さて、源内が語った本のタイトルはその名も『死を呼ぶ手袋』。その手袋を手にした人は皆死んでいく……というストーリーです。

徳川家基が急死したのは、狩りの時に手袋ごと指を噛んだ直後。「家基が始終指を噛む癖を知っていた“誰か”が、田沼意次が用意した狩り用の手袋に毒を仕込んだ」と思いついたのは、松平武元(石坂浩二)と平賀源内の二人でした。

武元が寝所で何者かに殺された今、「次は自分か上様か」と懸念した意次。「この手袋の件は口外してはまずい」と、源内にも類が及ばぬように捜査を中止させ、あえて冷たく突き放したのでは……と思い返した瞬間でした。

本草学者の源内は「甘い煙草」の怪しさに気が付いていた?

そんな源内の側で、例の大工・久五郎はせっせとキセルに煙草を詰め渡します。誰がどうみても怪しさ満点。蔦重がすぐに気がついた「甘い匂いのする煙草」「ハイテンション過ぎる源内の様子」。源内を陥れる罠にしか見えません。

久五郎が源内にしきりに勧めたのは、阿片なのか(時代的に違うのではという声も)大麻なのか、いずれにしても普通の煙草とは思えません。

ドラマの中では、刻んだ煙草の葉が入っている箱がクローズアップして映し出されましたが、ここでふと思ったのは、なぜ本草学者として優秀な源内は、この怪しげな草の正体に気が付かず、勧められたままに吸い込んでいたのかということ。

さらに、どうみても黒幕のあの人は、常に用意周到に計画を練り邪魔者を殺害していくのに、「なぜ、源内は本草学者なので、刻み煙草に阿片なり大麻などを混入させたら、絶対に気が付くだろう」と思い付かなかったのか?ということ。

もしかしたら、筆者の勝手な想像ですが、「狐憑き」と悪評が立つほど奇行が目立つってきた源内なら「薬物の混入に気が付いてもその後得られる酩酊状態も知っているはず。好奇心旺盛で気持ちが弱っているから、誘惑に負けて断らず、溺れていくだろう」……とあの人は推測したのかも。

と思うと、「どうみても黒幕のあの人」のサイコパスぶりにゾッとしました。

自暴自棄になり精神的に疲弊したうえブロマンスの絆で結ばれた意次との決別に傷付き、薬物煙草に手を出し、しばしの偽の悦楽に魅入られてしまったのでしょう。すでに幻聴や幻覚の症状が現れていました。

5ページ目 「煙草」の罠で幻聴・幻影の世界に引き摺り込まれた末に…

 

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