大河『べらぼう』切なすぎる…瀬川(小芝風花)と鳥山検校(市原隼人)惚れた相手のため身を引く二人の愛【後編】:4ページ目
蔦重のべらぼうな「夢噺」に自分のいる場所はない…
除夜の鐘をバックに瀬川の手紙の朗読が始まります。
検校の妻だった自分を憎む人がいること、吉原に対する差別が強い中で花魁だった自分を妻にした本屋への風当たりは厳しいものになるなど……聡明な瀬川は、そんな現実が頭の中に次々と浮かび蔦重の「遊女たちが楽しく過ごせる吉原」という「べらぼうな夢噺」に、曰く付きの自分の居場所はないと察したのです。
「自分を探す代わりに夢を見続けてほしい」と涙をとこぼしながら文をしたためる瀬川。身を引く覚悟を決めた瀬川は、宝物の『塩売文太物語』も置いていきました。もう二度と現れるつもりはないのでしょう。
まさかの二度目の「おさらばえ」。
白い花嫁衣装で大門を出ていくときの、凛然とした「おさらばえ」のときとは異なり、涙、涙のあまりにも切ない「おさらばえ」は、SNSでも「こんな悲しいおさらばえがあるとは」「辛すぎる」「涙腺崩壊」などという悲しみの声・声・声で溢れていました。
けれど、男前の瀬川の最後のしめくくりの言葉は、「いつの日も、わっちを守り続けてくれたその思い。 長い長い初恋をありがた山の鳶ガラス」。
かっこいい「粋」な別れの告げ方でした。愛する瀬川のために、自ら離縁を申し出て「自分は幸せな妻だった」の言葉に微笑んだ検校に似ています。
「間夫がいなけりゃ女郎は地獄とはこのことさ」という瀬川。身請けから自由になり、今度は間夫と水いらずで本屋を営むなど、ほかの遊女から恨みを買うことにもなり蔦重の商売の妨げになるとも考えたでしょう。


