手洗いをしっかりしよう!Japaaan

大河「べらぼう」蔦屋重三郎と瀬川を生涯結ぶ2冊の本 『心中天網島』『青楼美人』の紹介と考察【後編】

大河「べらぼう」蔦屋重三郎と瀬川を生涯結ぶ2冊の本 『心中天網島』『青楼美人』の紹介と考察【後編】:3ページ目

分かれても重なり合う二人の夢

「吉原をもっといい場所にしたいと一緒に二人で見てきた夢を、俺はこれからもずっと見続ける。結ばれなかったからこそ、この夢は絶対に手放さない」「この本を開けば、いきいきとした瀬川との思い出が鮮やかに蘇る、例え身請けしてもずっと想いは続く」という想いの強さを感じるセリフでした。

「一緒になろう」というプロポーズの言葉をはるかに凌駕する、宝物のような言葉でした。ドラマのタイトル、「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」の「夢」とは、まさにこのことではないでしょうか。

「そりゃあまあ、べらぼうだねえ」と涙を流す瀬川。幼いことからずっと想い続けてきた蔦重にそんなセリフをいわれ、万感の想いで胸が塞がれたことと思います。

幼い頃蔦重にもらった赤本『塩売文太物語』を何度も何度も大切に読み返していた瀬川のこと。この『青楼美人合姿鏡』は、鳥山検校の元にいき、毎晩男に体を売る日々からは解放されても、蔦重を想いきっと何度も何度も開くのではないでしょうか。

何かを感じ取ったような鳥山検校の表情

花嫁姿の瀬川をかごで迎えにきていた鳥山検校(市原隼人)は、瀬川が大門を出て行ったあと、『青楼美人合姿鏡』の口上を語る蔦重の声を聞いていたに違いないありません。瀬川には優しい表情で微笑んだ鳥山検校ですが、ふと何かを察知したような表情が気になりました。

人の感情に敏感な鳥山検校は、たぶん自分の元に来ても同じ本を何度も読んでいることに気が付き、彼女の胸の中には決して消すことのできない蔦重の面影が、今も色濃く存在していることに気が付いてしまうのではないか……とも。

鳥山検校は、悪徳高利貸しではあるものの、瀬川を大切に想う心と接する時の優しい態度は(『おい!』と部下を呼ぶときのドスの聞いた声は、これが本当の姿なのだなと思わせる怖さも)はずっと、そのままでいて欲しいと願わずにいられません。

スマートフォンはもちろんカメラも何もない時代。「自分の姿を『絵』に描いてもらう」いさらに「本にしてもらう」ということは、非常にうれしいことだったのでしょう。今後、この瀬川が描かれた『青楼美人合姿鏡』はどのような運命を迎えるのか気になりますね。

※トップ画像:NHK「べらぼう」公式HPより

 

RELATED 関連する記事