
大河『べらぼう』鳥山検校と五代目瀬川(小芝風花)の悲惨なその後…咲くも散りゆく4本の徒花【前編】
NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」で、迫力の花魁道中を披露した五代目・瀬川(小芝風花)。第9回「玉菊燈籠 恋の地獄」を皮切りに、運命は大きく変わっていきます。
吉原では、瀬川を巡り「恋の徒花(あだばな)」がひっそりと4本咲きました。徒花とは「咲いても、決して実を結ばぬ花」「すぐに散るはかない花」のことです。
遊女の平均寿命は23歳ほどと短命だったように、恋の徒花は開いても咲き誇れない短い命でした。夜になると金で買われた偽りの花が百花繚乱となる吉原で、互いの想いが通じて咲きかけるも散っていった4本の徒花をご紹介します。
恋を隠す遊女と恋を去勢された男に咲く徒花
1本目は、主人公・蔦重(横浜流星)と瀬川(旧・花の井)の間に咲いた徒花です。
幼い頃から蔦重を想い続けてきた瀬川は、彼が作った吉原細見『籬の花(まがきのはな)』をヒットさせるため松葉屋・五代目瀬川の名跡を襲名、お披露目の花魁道中を行いました。
本が売れて吉原に訪れる客は激増、それに伴い瀬川の指名は増え、休みもないまま客を取らされ続け、疲弊していきます。
体を張り支えてくれる瀬川の想いに、あまりもの鈍感な蔦重。腹を立てた人は多かったようです。けれども「女郎に手を出してはならぬ」と仕込まれて育った蔦重は、遊女に恋心を抱かぬよう精神的な去勢をされてきたようなもの。あっけらかんと「女を好きになったことがない」と語る蔦重には痛々しさすら感じます。