海賊版の偽造・販売…鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)が没落した”重版事件”とは?【大河べらぼう】:2ページ目
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一度ならず二度までも
時は流れて安永6年(1777年)、今度は使用人の徳兵衛(とくべゑ)が『新増節用集』を重版しました。
……ねぇ、バレないと思ったの?まったく同じ書名って……むしろ鱗形屋への嫌がらせですか?にしては身体を張っていますが……。
流石に短期間で二度目は示談では収まりません。
徳兵衛はお白洲に引き出され、江戸十里四方の所払いと家財缺所が言い渡されました。
所払いとは追放刑、江戸十里四方とは江戸城を中心に、半径5里(約20キロ)圏内の出入りを禁じられます。
家財缺所(~けっしょ。欠所)とは全財産の没収。かなり重い刑罰でした。
もちろん徳兵衛の主人である孫兵衛も監督不行届の連帯責任を免れません。
過料に処せられるより重かったのは、本屋仲間や社会の信頼を失うことでした。
この事件をキッカケに、鱗形屋の出版業は大打撃を受けます。
安永6年(1777年)から安永7年(1778年)までは何とか12種の黄表紙を出版していたものの、安永8年(1779年)には6種まで落ち込みました。
そして安永9年(1780年)にはとうとうゼロになってしまったのです。
終わりに
かくして三代にわたり江戸の出版業界を支えた鱗形屋は、主力商品であった吉原細見の版権まで蔦屋重三郎に奪われ、見る影もなく衰亡していきました。
盛者必衰とはまさにこのこと、後進の蔦重にお株を奪われた孫兵衛の胸中は察するに余りあります。
果たして大河ドラマではこのエピソードがどのように描かれていくのか、固唾を飲んで見守りましょう!
※参考文献:
- 今田洋三『江戸の本屋さん 近世文化史の側面』NHKブックス、1977年1月
- 松木寛『蔦屋重三郎 江戸芸術の演出者』講談社、2002年9月
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