坊主・小僧・入道…なぜ日本の妖怪には「僧侶系」が多い?寺院と庶民の関係から考察:3ページ目
傍証としての廃仏毀釈騒動
こうした憎悪の蓄積があった傍証としては、明治時代に発生した「廃仏毀釈」騒動が挙げられるでしょう。
明治維新とあわせて、明治新政府による「神仏判別令(神仏分離令)」が出された際は、政府の想像を超える規模の寺社の破壊や焼き討ちなどの騒動が全国で起こりました。政府もこの騒動を押さえるのにやっきになったと言われています。
つまり、統治者が意識していないところで、庶民は寺社に対して爆発寸前の怒りを抱えていたのです。
こうした寺と庶民の関係が、妖怪と僧侶の関係に反映されたのではないでしょうか。
寺に対して不満や恨みを抱いていた庶民は、僧侶を妖怪化することで、自分たちの感情を表現したかも知れません。
もちろん、僧侶を化物扱いするようになった理由はそれだけではなく、宗教者ならではの神秘性というのも見逃せないでしょう。
これはいわば、神通力や法力を使う僧侶の伝説が各地に残っていることの裏返しでもあります。
庶民にとって良い僧侶であれば、そうした神秘性は良い超能力として印象に残るでしょう。しかし妖怪扱いされるような悪徳な僧侶であれば、その神秘性は邪悪なものとしてイメージされたに違いありません。