上品だけど胡散臭い…山中崇が演じる平賀朝雅の生涯をたどる【鎌倉殿の13人】:3ページ目
時政の失脚により非業の最期
晴。牧御方廻奸謀。以朝雅爲關東將軍。可奉謀當將軍家〔于時御坐遠州亭〕之由有其聞。仍尼御臺所遣長沼五郎宗政。結城七郎朝光。三浦兵衛尉義村。同九郎胤義。天野六郎政景等。被奉迎羽林。即入御相州亭之間。遠州所被召聚之勇士。悉以參入彼所。奉守護將軍家。同日丑尅。遠州俄以令落餝給〔年六十八〕。同時出家之輩不可勝計。
※『吾妻鏡』元久2年(1205年)閏7月19日条
【意訳】牧の方(りく)が朝雅を鎌倉殿とするべく、実朝を「謀り奉る」企みをしていたことが発覚。尼御台・政子(演:小池栄子)は御家人たち(※)を派遣して実朝を保護、謀叛は未然に防がれた。
(※)メンバー:長沼五郎宗政(ながぬま ごろうむねまさ)、結城七郎朝光(演:高橋侃)、三浦兵衛尉義村(演:山本耕史)、三浦平九郎胤義(みうら へいくろうたねよし)、天野六郎政景(あまの ろくろうまさかげ)など。
時政が招集をかけた御家人たちも政子に付き従う様子に、観念した時政は出家した。この時一緒に出家した者は数えきれないほどだったという。
翌朝(閏7月20日)時政は伊豆へと追放され、義時はすぐさま京都にいる朝雅を討つべく使者を発しました。
果たして閏7月26日、朝雅は京都に駐在していた御家人たちの襲撃を受けて殺害されます。その時のメンバーがこちら。
五条判官有範(ごじょう ありのり)、後藤左衛門尉基清(ごとう もときよ)、源三左衛門尉親長(みなもとの ちかなが)、佐々木左衛門尉廣綱(ささき ひろつな)、佐々木弥太郎高重(たかしげ)、金持六郎廣親(かなもち ひろちか)、佐々木三郎兵衛尉盛綱(演:増田和也)など。
防戦しきれず逃げ出した朝雅を射止めたのは、山内持寿丸(やまのうち じじゅまる。後に山内通基)。かつて頼朝の乳兄弟でありながら弓を引いた山内首藤瀧口三郎経俊(演:山口馬木也)の六男です。
8月2日に鎌倉へ朝雅粛清の報告が届き、8月5日には牧の方の兄弟に当たる大岡備前守時親(おおおか びぜんのかみときちか。牧宗親の子)も出家。ここに牧氏の変は終息したのでした。
終わりに
以上、源氏の血統と北条とのコネでよい位置にいたものの、牧の方と時政の野望に巻き込まれて破滅した平賀朝雅の生涯をたどってきました。
山中崇さんの演じる朝雅は、その名が示す通り王朝文化の雅やかな香りを漂わせつつ、坂東武者たちを見下して反感を買う役柄が予想されます。
上品だけど胡散臭い……「もし頼朝にカリスマと天運がなかったらこうなっていたかもな」と思わせる展開で、いい感じにヘイトを集めつつ、でもちょっといいヤツな面もちらつかせて視聴者の心を揺さぶるつもりでしょう。
後半に差しかかったとは言え、まだまだ続く「鎌倉殿の13人」。それぞれの野望が入り乱れる鎌倉に、朝雅の存在が新たなスパイスとなりそうです。
※参考文献:
- 坂井孝一『鎌倉殿と執権北条氏 義時はいかに朝廷を乗り越えたか』NHK出版、2021年9月
- 安田元久『人物叢書 北条義時』吉川弘文館、1986年4月