まさかのカンニング用!?天皇陛下や神職が手に持っているあの板は何?笏(しゃく)にまつわる雑学:2ページ目
笏の乱れは心の乱れ?
やがて時代は流れ、明治時代に入ると神職が祭礼に臨んで威儀を正すための彩物(さいもつ)とされました。女性神職の場合は笏の代わりに扇を用いることもあると言います(もし女性神職を見かける機会があったら、チェックしてみたいですね)。
基本的に右手で持ちますが、出雲大社のように両手で持つところもあるようです。
握り方については特に決まりがないのか「教える人によって異なる(知人の神職談)」らしく、しっかりとグリップするよう教える人も、指先に神経を集中して持つよう教える人など様々と言います。
「祭礼に臨む神職が真剣に奉仕しているか、笏を見れば判ります。どんな持ち方であれ笏が身体に対して傾いて(乱れて)いれば、たいてい邪念を浮かべているものです(同)」
……とのこと。地鎮祭や七五三など、ご祈祷を受ける機会があったら、笏の持ち具合をチェックしてみると面白いかも知れません。
カンニングペーパー(笏紙)を貼っては剥がし……
ところで冒頭に笏は「カンニングペーパーを裏に貼るためのもの」と言いましたが、どんな時に使うのでしょうか。
古来宮中の作法は煩雑であるため、そのすべてを記憶するのは非常に困難でした。なので、式次第や作法などを記した笏紙(しゃくがみ)を裏側に貼り付けておいたのです。
もちろんすべてを書くことは出来ないので、要点だけを効率よくまとめておくスキルが求められたことでしょう。
公務や儀礼のたびに剥がしては貼りなおすのですが、何度もやっている内に続飯(そくい。飯粒を練った糊)で笏の表面がボロボロになってしまいます。
用途に応じて笏を揃えておけば貼りかえる頻度を抑えられるのでしょうが、笏もなかなか高かったようで、下級貴族にはそんな余裕はありませんでした。
そこで清少納言『枕草子』では「いやしげなるもの(卑しげなる=下品な物)」の例として「式部丞(しきぶのじょう)の笏」を挙げています。
式部丞とは式部省(宮中の儀礼式典などを司る部署)に仕える判官の総称で、その位階は五位から六位とあまり経済的余裕がありません。
儀礼や式典など覚えること=笏紙を貼る機会が多いけど、笏を買い足す・買い替える・買いそろえる余裕がないため、笏はどんどんボロボロに。結果どうしても「いやしげ」になってしまうのでした。