古来「男心と秋の空」とはよく言ったもので、コロコロと移り変わる飽きっぽさを表しています。
昨日惚れたと思ったら、今日は早くも乗り換えて、どうせ明日は別の人……とまぁこんな具合。アテにならないったらありゃしません。
まして権力者なんて、世の中何でも我が意のままなどと思っていますから、気まぐれぶりも人一倍。
そこで今回は平清盛(たいらの きよもり)に振り回された厳島内侍(いつくしまのないじ)を紹介。
果たして彼女は、どんな被害を受けたのでしょうか?
美貌を見初められ、清盛の妾となるが……
厳島内侍は、その名前(実名は不詳)が示す通り厳島神社(広島県廿日市市)に奉職する巫女。
内侍とは、参拝客をもてなすために歌や舞楽などを披露する役職でした。さしづめ神社のお抱え歌手&ダンサーと言ったところでしょうか(以下、個人名として厳島内侍で統一)。もちろん清盛も歓待を受け、彼女を見初めて妾とします。
当時の清盛は平治の乱(平治元・1159〜永暦元・1160年)で政敵らを一掃、まさに向かうところ敵なしの絶頂期。
彼女としても、いつまで芸能稼業が続けられるとも分かりませんし、引退後のパトロン候補として悪い相手ではありません。
(まぁ、下手に断ったら後で面倒そうだし、そもそも条件だけならこれ以上の相手はいない=断る理由がないでしょう)
で、晴れて清盛の寵愛を受けた厳島内侍。しかし男心は……の例に洩れず、あっさり飽きてしまった清盛は、彼女を家人の平盛俊(もりとし)に下げ渡してしまうのでした。