春は出逢いと別れの季節…『古今和歌集』より、行動を起こす決意を詠んだ源寵の和歌を紹介
春は出会いと別れの季節。多くの方が期待と不安を胸に、新たな節目を迎えたことでしょう。
そんな思いは平安時代の貴族たちも同じだったようで、今回は『古今和歌集』より、源寵(みなもとの うつく)の詠んだ短歌を紹介。
果たして彼女は、どんな節目を迎えたのでしょうか。
「もう行ってしまいますからね!」常陸国へ旅立つ
朝なけに 見べき君とし たのまねば
思ひたちぬる 草枕なり※『古今和歌集』巻八より
【意訳】いつ会えるか分からないあなたをたのみにするのはもうやめます。
あなたへの思いを断ち切るため、私は常陸国(現:茨城県)へ旅立つことにしました。
……これは藤原公利(ふじわらの きみとし)へ当てた別れの歌で「君とし」が公利にかかっています。
また「思『ひたち』ぬる」が常陸にかかって行き先を暗示。ということは、もしかしたら
「本当にいいんですか?私は常陸へ行ってしまうんですからね!」
「引き止めるなら、これが最後のチャンスなんですからね?」
などの駆け引きが含まれているのかも知れません。
(未練がないなら追って来られても困るだけなので、行先は教えない方が得策)
あるいは本当に常陸へ行くあてが出来た、例えば常陸の国司(常陸介)と関係を持ち、現地へついて行った可能性も考えられます。
果たして実際はどっちだったのでしょうね。