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世俗に嫌気が差した美女!室町時代、どんなセクハラも倍返しで撃退した尼僧・慧春尼の生き方

世俗に嫌気が差した美女!室町時代、どんなセクハラも倍返しで撃退した尼僧・慧春尼の生き方

天才とナントカは紙一重……度肝を抜かれる奇行の数々

さて、めでたく?出家を果たした慧春尼は厳しい修行を乗り越えて印可(いんか。お墨付き)を下され、最乗寺の山麓に摂取庵・正寿庵・慈眼庵を開き、人々の教化に功績を上げます。

しかし天才とナントカは紙一重と言う通り、彼女は相当な奇行で知られていました。

例えばある時、鎌倉の円覚寺へ使いに訪れた際、一人の僧侶が彼女を驚かそうと前に立ちはだかり「老僧が物三尺(意:私の男性器は三尺≒約90センチの長さだ)」とそれを見せつけました。完全にセクハラですね。

しかし慧春尼はあわてず騒がず、それどころか自分の袈裟の裾をまくり上げて自分の女性器を見せつけ「尼が物は底なし(私の女性器は底なし≒そんなものに怯む私ではない)」とやり返します。

常軌を逸した反応にその僧侶は逃げ出し、また円覚寺の堂頭(住職)も禅問答でやり込められたということです。

またある時。顔を焼いたとは言ってもやはり美女は美女、最乗寺での修行中、同門の修行僧から関係を迫られました。

もちろんお互い修行中なのでそんなものは断るのですが、なかなか引き下がってくれません。

「尼若し我が願を諾せば、湯火と雖も辞せず、況んや其余をや」
※『曹洞宗人名辞典』より

【意訳】尼=あなたがもし私を受け入れてくれるなら、どんな困難でも乗り越えましょう。

ほう、その言葉に偽りはあるまいな……という訳で後日、了庵の僧堂に一同が集合した際、慧春尼は群衆の真ん中に全裸で登場し、件の僧侶を呼びつけます。

「汝と約あり速に来りて我に就き、汝が欲を肆にすべし」
※『曹洞宗人名辞典』より

【意訳】あなたと約束があります。今すぐここへ来て私のことをあなたが望むままにしなさい。

肆(ほしいまま)……と言えば、ここでは他ならぬ男女の交わりですが、そんなことをすればたちまち破門どころか、住職の妹に手を出したとなれば、殺されてしまいかねません。

「それでも私を求めるなら、どうぞ好きにするがいい」

慧春尼のメッセージに恐れをなしたその僧は、たちまち脱走してしまったということです。

これらの奇行は、女性を性的欲望の対象にすることへの反発とも見られ、慧春尼は日本におけるフェミニストの先駆けとも言えるでしょうか。

3ページ目 エピローグ・燃え盛る炎の中で……

 

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