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これ読める?無悪善、子子子子子子…優秀だけど一言多い平安貴族・小野篁の解答やいかに

これ読める?無悪善、子子子子子子…優秀だけど一言多い平安貴族・小野篁の解答やいかに:2ページ目

一つの漢字を三通りに読み分ける

当然、嵯峨天皇はカンカンです。

「これを一発で読めたと言うことは、書いたのはそなたであろう……いったい何が気に入らんのかは知らんが、この不敬に対して覚悟は出来ておろうな!」

これはもうあかんヤツや……今にも篁が処刑されてしまうのではと震え上がる学者たちとは対照的に、篁は飄々としたもの。

「いやぁ、別に悪気はないし、書いたのも私ではありません。私はこの世のどんな難文であっても読めてしまうものですから……」

たとえ無実であるにしても、実に小憎らしい篁の態度に腹を立てた嵯峨天皇は、とっておきの漢字クイズを出すのでした。

「よーし!だったらこれを解いてみよ!間違っておったら即刻処断するゆえ、心して読め!」

かくして出題されたのが「子子子子子子子子子子子子」……流石の学者たちも、今度は嵯峨天皇への忖度抜きで読めませんでした。

フフフ……小癪な若造めが、せいぜい間違えて泣きながら命乞いをするがよいわ(本当に殺す気はないが、一度は凹ませてやらんと気がすまぬ)……内心ほくそ笑んでいた嵯峨天皇の期待を裏切るように、篁はあっさり答えてしまいます。

「ハッ……『ねこのここねこ、ししのここじし(猫の子、仔猫。獅子の子、仔獅子)』でしょ?簡単すぎます」

子という漢字は「ね」「こ」「し」とそれぞれ読めるため、適宜組み合わせて文章を推測したのです。

素晴らしい頓智(とんち)にグウの音も出なかった嵯峨天皇でしたが、その後も才に驕った篁は、やがて過激な朝廷批判によって隠岐国(現:島根県隠岐郡)へ流罪とされてしまったのでした。

(その後、華麗なカムバックを果たすのですが、そのエピソードは又の機会に)

果たして「無悪善」が篁の手によるものなのかは謎のままですが、「口は禍の元」を地でいった人生だったのは間違いなかったようですね。

※参考文献:
小林保治ら訳『新編日本古典文学全集 (50) 宇治拾遺物語』小学館、1996年6月

 

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