大晦日・お正月・節分・お盆をつらぬく日本文化の「根っこ」とは?【前編】:2ページ目
年末大掃除も「カミ」を迎えるための儀式
さて、しかし昔の庶民のすべてが、いちいち大祓のような大げさな儀式を行っていたわけではありません。民間のレベルでは、邪気やケガレを祓って新たな生命を得るために、別の形での「儀式」を行っていました。
その儀式とは難しいものではなく、「身を慎んで静かに過ごす」というものでした。昔は年明けと同時に一つ年齢を重ねると考えられており(数え年)、大晦日には夜の訪れと同時に食事を採り、後は家にこもって静かに休んでいました。
そして深夜に年が改まったところで、一年のケガレ・邪気などが祓われて、衰弱していた魂に新たな命が吹き込まれます。生命の新旧交代が起きるのです。
今でも、大晦日の夜に一家の主人が氏神の社にこもる習慣が残っている地方があるそうです。おそらくこうした「身を慎んで静かに過ごす」習慣の名残でしょう。
さて、ところで民俗学者の折口信夫は、日本の祭りというのは、この「年の終わりの鎮魂の祭り」を中心にして発展したものだと考えたそうです。
彼によると、古代の人々にとって、大晦日にケガレが払われて正月がやってくるというステップは、単なる自然現象ではありませんでした。それは、異界から訪れたカミ(神)がもたらしてくれる祝福でした。
そうしたカミが家の主人に祝福を与え、翌年の魂の復活・蘇生を保証し、同時に新年の農作物の豊穣をも約束してくれたのです。そもそもそれが、冬に行われる祭りというものの原型でした。
ですので、人々は大晦日の深夜(除夜)になると、異界からのカミの訪れを待ち、身を慎んで過ごしたのです。
ケガレを払うだけではなく「身綺麗にして新年を迎える」という考え方は、すす払いや年末の大掃除の習慣にも引き継がれていますね。
先ほどは全国の神社で行われる大祓をご紹介しましたが、大晦日に邪気やケガレを積極的に祓う儀式の名残は、私たちにとってごく身近な習俗の中にもあります。
それは、節分の豆まきです。